今日は、イズルードダンジョンで面白いものを拾った。  ヒドラの苗床にされていた剣士の少女だ、おそらくは地面の滑りにでも足を取られて転んだところを襲われたのだろう、死体の類に は見慣れているが、やはり酷い有様だった。 子宮内にべとべとする液体と共に注ぎ込まれた卵細胞から成長したヒドラ幼体は、彼女の膣口からだけでなく腹や肛門を食い破って体 表に這い出し、母体の両脚の殆どを初めての食事として喰い散らかしていた。 本来消化器官や各種臓器が収まっているべき腹腔内で触手が激しく蠢いているところを見ると、その部分も大分消失してているのかも しれない。 獲物の体を苗床としてだけでなく、同時に食料にもしてしまうとは、ヒドラの貪欲さには驚きというより、少しばかり呆れた。  しかし充分な驚きに値する事もあった。その剣士の少女だ。 なんと、それほどの身体喪失状態にありながら、僅かに命を取り留めていたのだ。 おそらくヒドラが苗床に利用する為に、薬効物質の分泌などで最低限の生命維持状態を保っていたのだろう。痛覚や感情が閉鎖される と、人間というものは思いのほか長持ちするものだ。それに、予想するに代謝機能の一部などをヒドラ幼体が一時的に担っているのか も知れない。彼女が死ぬ時は、胎内のすべてのヒドラが産声を上げる瞬間、といった所か……。  『それ』に対して俄然興味が涌いてきた私は、研究サンプルとして持ち帰ることにした。 さすがにヒドラ幼体は接近する私に対して攻撃行動に移ってきたので、ニュマで貧弱な触手を無効化しつつ、サンプルの体を今以上に 傷つけないよう、ホーリーライトの連射で一体ずつ丁寧に処分した。  そうしてようやく、自分の両手で持ち上げた少女の体には、ある種の美しさがあった。 両脚と臓器の大半を失いながら、今だ生命の火を絶やさぬ若い肢体。部品と宿り手を失い大きく凹んだ腹部で、ただ一つハート型に盛 り上がる子宮だけが、僅かに脈打ち、その存在を高らかに叫んでいる。  私はその微かな輝きを絶やさぬよう、何度もヒールを唱えながら、一番近い拠点のイズルードへと帰還した。