それは、いつもと変わりない朝だった。 一人のクリエイターがシャワーを浴びる音が部屋に木霊している。 ザァァという規則的な音と、湯気に巻かれる優しげな温度が平和的な風景を描く。 彼の飴色の髪の毛が、水に濡れてしなやかに形を変える。 鼻をくすぐる石鹸の香は、彼の高ぶった気持ちを酷く落ち着かせた。 そして、そのいい香に混ざって香る、鉄錆の匂い。 足元を流れる、赤。 足元を転がる、肉片。 ふとそれらに目を落とし、クリエイターは形のいい唇で弧を描いた。 昨日はいい実験材料が手に入り、夜通し研究を続けていた。 昨日手に入れたのはアコライトの装束を纏った少女。 その歳にしては珍しい才能と美貌を兼ね備えた少女だった。 彼にとって、「才能」を研究することは生きることと同等だった。 そのためには身体を解体することも、脳をえぐることも、そのときの悲鳴さえも何の価値も持たなかった。 ピンポーン シャワーの音にまぎれて、早朝には不釣合いな無粋な音がクリエイターの耳に届いた。 家のベルがなっている。 こんな時間に誰だろうと思うより先に、自分のホムンクルスの心配をした。 彼のホムンクルスはバニルミルトの二次形態であり、所構わず動くものを襲ってしまう習性を持った少々危険な子だった。 そんなホムンクルスを安息させていないことに気付き、ひとつため息をつく。 …死体処理が増えてしまう。 そう思って。 『おーい、キリオー?いねーのか?テト、お前の主人どこ行ったよ?』 その声を聞き、クリエイターは少なからず驚いた顔をした。 その声は、自分の製薬したポーションをいつも買って行くお得意のローグの声。 そして「テト」というのはホムンクルスの名前だった。 ローグの声は怯えた様子もなければ、悲鳴を上げる気配も無かった。 …まさか、自分にしか懐かないあの凶暴なホムンクルスを手懐けているのか? もしそうなら、 「すみませン三虎サン。今シャワー中でス。ちょっと…待っててもらってもいいですカ?」 何て面白い研究資源なんだろう。 それから暫くして、クリエイター…キリオは汚れていない洋服を身につけローグの元へ行った。 ローグ…三虎は、あのホムンクルスと無邪気に戯れている。 三虎の赤い髪にまとわりつくように、ホムンクルスが三虎の頭にのっていた。 …誰にも懐かなかったはずなのに。 あの子に襲われて大怪我をした(そして死んでいった)人間は少なくないのに。 三虎はとても楽しそうに笑い、ホムンクルスをなでていた。 「お待たせしてすみませン。今日もいつものですカ?」 「あぁ、気にすんな。今日はちと多いんだ。白2000に青1300。それからコーティング剤500」 「また大量ですネ。」 「あぁ。悪いがギルド付けで倉庫に送っててもらえねーか?」 「えぇ、わかりましタ。」 キリオは今三虎に言われた商品を目盛るのと同時に、自分の手が少なからず震えているのに気付いた。 それは、目の前の研究材料に対する期待の現われ。 なぜ彼はいとも簡単にホムンクルスを手懐けられたのか。 そして、彼をどのように研究していくか。 ソレばかりがキリオの頭を支配していた。 「み…三虎さン。今日、これから…お時間あります、カ?」 「ん?」 相も変わらずホムンクルスとじゃれあっている三虎に、キリオはおずおずと声をかけた。 逃がしたくない。絶対に。逃がしてなるものか。 そんな邪念が彼の周りを渦巻いていた。 多分、三虎が聖職者か魔導師だったなら、殺気に気付いて席を立っていたかもしれない。 実際、三虎の膝に乗っていたホムンクルスは少しだけ怯えた様子を見せた。 しかし三虎はそれに気付くことができなかった。 三虎は少し笑いながら「特に何もないぜ?」と返答した。 そのとき、キリオの唇がまたあの鋭利な弧を描いた。 それに気付いたのは、キリオ自身だけだった。 「よかっタ!調度質のイイ紅茶が手に入ったんでス。お茶菓子も出しましょウ。」 「おー!んじゃ、遠慮なく馳走になるわ」 その笑顔を最後に、三虎は机に突っ伏した。 三虎が目を覚ましたのは、それからきっかり1時間後だった。 といっても、三虎に時間を知る術はなかった。 三虎は何か分娩代のようなものに横たえていた。 目を覚ましたところは薄暗く、ちかちかと点滅する蛍光灯が一生懸命あたりを照らしている部屋。 先ほどキリオに出されたお茶菓子を食べた部屋ではなく、窓が一切ない。 どこからかちょろちょろという水の音が聞こえ、空気口から漏れる風の音が酷く不気味だった。 三虎は、倒れていた身体を起こそうともがいた。 しかしそれは叶わなかった。 両手首と両足首に感じるひやりとした感触。 それが枷であり、自分が拘束されていることに気付いたのと同時に彼の頬を冷や汗がひとつ流れた。 「お目覚めですカ。三虎さン」 そのおぞましい部屋に、キリオの涼やかな声が木霊した。 キリオは恐ろしいくらいの満面の笑みで、三虎を見つめていた。 手にはノートとエンピツ、そして手術で使うような機材を所狭しと並べた銀色のカート。 その光景を見、三虎は少なからず恐怖を覚えた。 その恐怖がキリオにばれないように、腹に力を入れ声が震えないように注意を払う。 「…何の真似だ」 「怖い顔しないでくださイ。三虎さんに私の研究を手伝って欲しいだけでス。」 キリオは、本当に心底楽しそうに笑みを作った。 そしてその顔のまま、拘束された三虎をなでる。 三虎は今にも噛み付かんばかりの顔でキリオを威嚇したが、キリオはお構い無しにノートにペンを走らせた。 カリカリと、鉛が紙を引っかく音だけが部屋に木霊する。 それが終わると、キリオはまた目線を三虎に戻し今度は慈しむように見つめた。 見つめながら、ズボン越しに三虎の股間に手を這わせ、にっこりと笑った。 「先にコレ、切り取りますネ。邪魔ですシ、いい漢方薬になりまス。」 三虎はいよいよ声が出なかった。 キリオの手にはいつの間にか大きなはさみが持たれ、ジョキジョキと三虎のズボンを切り刻んでいく。 外気に曝された三虎の性器は可哀想なくらい縮み、三虎の目には絶望と恐怖が浮かんだ。 あのはさみで切られたら、自分は失神してしまう、もしくはショック死でもするのではないだろうか。 そう思うと、三虎は恐怖のあまり指の先ですら動かすことが出来なくなった。 はさみの刃が、まるでスローモーションのように動いて見える。 両の刃が肉に食い込んだ瞬間、三虎は目を瞑り、次に襲う激痛に耐えようとした。 …しかし、その激痛はいくら待っても三虎の身体を襲うことはなかった。 「…忘れてましタ。遺伝子情報も貰わないト。…すぐに取れるから男の人は便利なんですヨネ。」 そういうと、キリオは大きなはさみを台に置き、代わりに自分の手で三虎の性器をこすりあげた。 こんな状況であろうと、与えられた刺激に反応してしまう自分の身体を呪いつつ、三虎は唇をかんだ。 …どうにか脱出できないものだろうか。 というかなぜ自分がケンキュウとやらにつき合わされているのか全く理解できない。 頭をぐるぐる回転させ、脱出の方法をいくつも考える。 自分の性器を這うキリオの手が邪魔で気が散ってしまう中で、三虎は自分の頭に鞭打った。 しかしそんな三虎を見据えて、キリオはまたおかしそうに笑った。 「無理ですヨ、三虎さン。逃げることなんて。」 「っあ…!!っくそ、やめ、離せっ…!!っあ゛あああ゛ああああ!!!??」 キリオが急に手を早め追い詰めるものだから三虎はあっけなく達し、それと同時に先ほど覚悟した激痛が三虎の全身を貫いた。 三虎は瞳が零れ落ちそうなほど目を見開き、喉をそらし、生理的なものなのかそれとも本当に激痛からなのか分からない涙をこぼしながら痙攣していた。 それでも気絶は許さない。 キリオは強めに三虎の頬を殴り、意識を覚醒させた。 三虎の目からぼろぼろと溢れる透明な雫は、三虎の赤い髪を湿らせる。 ヒュッ、ヒュッ、という三虎の呼吸音が当たりに大きく聞こえた。 溢れる赤と溢れきった白が奇妙なコントラストを描き、キリオの感情を高ぶらせる。 つんと鼻を突く鉄のにおいにはもう慣れた。 キリオは、手に持っていた精子の入ったスポイトと性器を無機質な台の上に置いた。 そしてその代わりに、今度は電子メスを手に持った。 カツカツと靴を鳴らし三虎の頭部へと歩く。 キリオのその姿は、おそらく三虎の目には映っていなかっただろう。 三虎の体がガクガクと痙攣するのを見つつ、キリオは三虎の額に口付けた。 「貴方の中身、見せてもらいますネ。」 そういうと、キリオはたった今口付けた三虎の額に電子メスを突き刺した。 「あ」という小さな三虎の喘ぎと、肉を焦がす嫌なにおいが同時にキリオを刺激した。 ゆっくりと額が切れていくたびに三虎の体の震えの間隔が小さくなっていく。 時折ビクン、と大きく震える事もあれば、小刻みに震える事もあった。 電子メスが頭を一周し終えたときにはもう、三虎の瞳は光を映していなかった。 流れた涙の跡が痛々しく、半開きになった口を覗けばまだばら色の舌が見えた。 キリオはゆっくりと、切り取った三虎の頭蓋骨の上半分をはずした。 ぶちり、と神経の切れるような感覚が何度か手に伝わったが、特に気にならなかった。 はずした頭をトレイに乗せ、むき出しになった三虎の脳をキリオは満足そうに眺めた。 健康そうな薄灰色のそれは、時折ぴくぴくと蠢いていた。 注意深くそれに触れると、また三虎の口から小さな喘ぎが漏れた。 それは刺激すればそのとおりに、規則的に漏れる喘ぎ。 それが少しだけ面白くて、キリオはいたずらをしている子供のように三虎の脳を何度か刺激した。 「…貴方の最大の幸せは、その才を持って産まれることが出来たコト。貴方の最大の不幸は、それを私に知られたコト。」 そう呟くと、キリオは三虎の頭に手を突っ込み、脳を引っ張り出した。 それは、いつもと変わりない朝だった。 一人のクリエイターがシャワーを浴びる音が部屋に木霊している。 ザァァという規則的な音と、湯気に巻かれる優しげな温度が平和的な風景を描く。 彼の飴色の髪の毛が、水に濡れてしなやかに形を変える。 鼻をくすぐる石鹸の香は、彼の高ぶった気持ちを酷く落ち着かせた。 そして、そのいい香に混ざって香る、鉄錆の匂い。 足元を流れる、赤。 足元を転がる、肉片。 ふとそれらに目を落とし、クリエイターは形のいい唇で弧を描いた。 ---------------------------------------------------------------------------- ち○こを切り取る描写を描きたかった。 今は大分満足しつつ反省している。