ニブルヘイムに四人のPTが来ていた。 プリーストの少女とクルセイダーの少年、モンクの青年、商人の少女だ。 商人は妖精の耳を着けているのでどうやら二次職に転職しなかった様に思える。 「お前がオーラになるか商人のたれ猫が出来るかどっちが早いだろうなー」 モンクがプリーストに言う。 「どうだろう…運が良ければたれ猫が先だろう」 ウサギのヘアバンドをつけたプリーストが苦笑しながら答えた。 四人は順調に黒猫人形を集めたり、プリーストのレベルを上げたりしてこのまま両方終わるかに見えた。 「ブラッティマーダー一匹!ジビット二匹!ロリルリ一匹だ!」 クルセイダーが皆に言った。 「ちょっと数が多いが…何とかなりそーだな」 不適に笑い、モンクがまずジビット二匹と応戦する。 すかさずモンクの加勢に商人がカートレヴォリューションを放とうと駆け寄った。 しかし…。 突然、商人はその場から消えてしまったのだ。 「ンな!?」 モンクが焦った。 どこかに離れてしまった商人の助けを呼ぶ声が聞こえた。 『嫌ーーー!誤爆しちゃったから助けにきて〜〜;』 いくら妖精の耳を装備できるレベルでも商人一人だけで生き残るのは無理である。 即座にプリーストが彼女にその場から動かないように指示する。 「回収する…二人とも持ちこたえれるか?」 困り顔でプリーストはクルセイダーとモンクに言った。 「少しくらいならなんとか大丈夫」 クルセの言葉にうなずき、プリーストはテレポートを唱えた。 意外と早くプリーストは商人と合流出来た。 「うぅ〜…怖かったよ〜」 泣きつく商人。それをそっと抱き、頭を撫でた。 「もう大丈夫だ…皆の所に戻ろう」 商人は涙目になっていたがほっとしたのか笑顔になった。 「おい!ジビットは片付いたぜ」 モンクがブラッティマーダーと交戦中のクルセの加勢に入る。 「助かる」 クルセは一旦後ろに下がり、白ポーションを飲もうとした。 その途端、ドンッという衝撃を感じた。 「……え…?」 視線をさげる。 ごっそりと右脇腹が無くなってそこから残っていた内臓がズルリと地面に落ちていた。 叫ぼうとしたが喉の奥から血があふれだし、ゴボゴボと声にならない音しか出なかった。 「おい!回復にいつまでかかってんだよ?豪快に白ポがぶ飲みすりゃあ…」 振り返ったモンクは青ざめた。 「マジかよ…;増えてる…」 彼らの近くにいたPTの倒しきれなかった分のモンスターがすでに事切れているクルセイダーを切り刻んでいた。 一斉に、たった一人となってしまったモンクを襲った。 「な…」 プリーストは絶句した。 当たり前である…自分達が帰ってきたときには二人は無惨に肉塊となっていたから。 しかも溜め込まれていたモンスター達は今度はプリーストと商人を狙う。 その中のブラッティマーダーがソニックブローを繰り出した。 「に…逃げろーーーーー!!」 プリーストが叫び、商人を自分の後ろに突き飛ばした。 ウサギのヘアバンドが似合っていた青髪の美人だったプリーストはあっという間に肉塊となっていった。 「いやーー!おねーちゃーーん!」 商人は腰が抜けて立てなくなったため、逃げる事が出来ないまま泣きじゃくった。 「ひっく…うぇっく…誰か……誰か助けてよ……」 ゆっくりとブラッティマーダーの包丁が商人に振り下ろされたのだった。 「うわー;ちょっとキツイかもー;」 おもちゃ工場二階でレベル上げしていたシーフが二、三体のクルーザーに集中砲火を受けていた。 ペアでいたアコライトもspが尽きてしまったようだ。 と…その時、通りかかったクリエイターが二人にポーションピッチャーをした。 「あのー…大丈夫ですか?」 無事に片付き、二人はそのクリエイターにお礼を言った。 「じゃあ、気をつけてね」 そういって手を振って去っていったクリエイターの少女は片腕だったのだ。 「ねえ?あの人…なんで片腕しかないの?」 シーフがアコに訊く。 「昔、ニブルでモンスターの群れに襲われた時に腕を片方失ったって噂があるけど… 本人は記憶喪失だし…記憶が無くなるほどショックなことでもあったのかな?」 今、噂になっている片腕の女クリエイター。 彼女はとても親切で、よく人助けをする。 しかし彼女の昔は誰も知らない。本人でさえも昔の自分を思い出せないそうだ。 たくさん人助けをしたら思い出せるかもしれないと今日も彼女は辻回復をしつづけているのだった。 END