アサシンダガー 乾いた埃っぽい空気・・・透き通った星空・・・ ああ・・・またあの砂漠の夜の夢だ・・・ 幼い頃の記憶、俺と母親はモロクから首都へと向かっていた。 親父も一緒に向かうだったはずだが「ギルドに挨拶をしてくる。」と言って先に出発した。 首都で合流する予定になっていた。 女性と子供で砂漠超えをするのは辛いだろうと商人一家のキャラバンが声をかけてくれて 俺たちはそのキャラバンと砂漠を越えることになった。 商人一家は商人夫婦とハンターの長男とまだ幼い長女、加えてこっちは剣士の母にガキの俺 ダンジョンに挑むならともかく砂漠の狼程度には十分なメンバーだった。 向こうの女の子・セレスティアとは歳も近くすぐ打ち解けて仲良くなった。 長男のオリヴァーは普段は冒険者らしく、楽しい旅の話を聞かせてくれた。 普段から親父が家に帰ることは少なく寂しい思いをしていた俺はこの家族の暖かい感じに惹かれていた。 親父が今の仕事を辞めて首都で暮らそうと言ったことに対する期待と今の旅がずっと続けばいいという想い。 そんな葛藤を伴った旅だった。 砂漠越え二日目の晩、俺達はオアシスで夜を明かすことになった。 夕食を済まし俺とセレスティアは小高い丘で星を見ながら語り合っていた。 「綺麗な星・・・ねぇ、アルフは将来の夢とかあるの?」 「まだ何も考えてないなー・・・何がしたいんだろう」 「私は怪我した人を治したいからアコライトになりたいの」 不意に後ろから声が響く「俺はでかい獲物を狩りたかったからハンターだ」 「兄さん、いらっしゃい」 オリヴァーは俺とセレスティアの横に腰を降ろした。 「商売したいならうちの親みたいに商人、人を護るなら騎士やクルセイダー、まぁ魔法使いたいならマジシャン系だが ・・・俺の見立てだとお前は近接職だろうな」 「俺は・・・」 「まぁまだ若いんだ、これからの出会いにもよるさ。かっこいい魔法を見たり誰かに命を救われたり 護りたい人ができたりな・・・」 その言葉に俺はふ、と隣の少女の顔を覗いた。俺と目が合うと照れくさそうに微笑む ・・・この旅がずっと続くなら・・・この子を護りたいと思うんだろうが・・・ そんな事を考えていた時、全身に悪寒が走った。それはセレスティアも同じようだった。 オリヴァーも何かを感じたらしくとっさに身構える。「・・・血の匂いだ・・・」 「いいか、二人共そこを動くなよ!」 言い残すとオリヴァーは丘を下っていった。だが嫌な予感は続く・・・。 「狼くらいだといいんだけど・・・」気休めに口に出すがセレスティアは震えたままだ。 「・・・きっと違う・・・人の意思・・・感じるもん・・・」 風に乗って悲鳴が聞こえる・・・俺は震える足で立ち上がった。 「どうする・・・気なの・・・?」 セレスティアが尋ねるがこれと言った考えがあるわけじゃない。 でも今日は風が穏やか過ぎて砂にここまでの足跡がはっきりと残っていたし、ここで二人で逃げ出しても子供二人で 砂漠を越えるのは難しそうだ・・・何より・・・自分とこいつの家族を置いて逃げたくなかった。 「気付かれないように様子を見にいってくる。セレスはここで待ってて」 セレスティアは震えながら首を振る。「ここで待ってたらみんな居なくなっちゃう気がする・・・から」 「じゃあ俺と20メートルは離れてついてきて・・・何かあったらすぐ逃げるって約束して!」 答えを聞かずに俺は丘を下りだした。 テントの影に身を潜ませて様子を窺う・・・セレスティアはちゃんと離れた位置で身を伏せていた。 ・・・セレスティアの両親はすでに血を流し地面に倒れている・・・もう・・・息はないだろう・・・。 オリヴァーは二人と交戦中だったが両親の死体を目の前に冷静さを失っているらしく狙いが定まっていない。 「何なんだよっ!このアサシン共・・・っ・・・!!」 言い終える前に後ろから現れた3人目に首を切り落とされた・・・ 落ちていくオリヴァーの頭と・・・目が合った気がした。 涙と震えが止まらない・・・泣き出したくなるのを必死に堪える。 セレスティアからは見えない位置での惨劇だったことが・・・かろうじて助かったのだろう・・・ でも今のままじゃ時間の問題だった。殺人者の話し声が聞こえる。 「早かったっスねぇ・・・あの美人女剣士とお楽しみするんじゃなかったんっスか?」 「ああ・・・あんま抵抗すっから殺っちまったよ・・・いい身体してたのになぁ」 ・・・母さんも・・・死んじゃったんだ・・・ 力が抜けて視線を地に這わせる・・・この場にいない親父のリュックが目についた。 誰かが放り投げたように中身が散乱している・・・2刀の・・・黒い・・・刃が・・・ 「ひゃ・・・っ!!」 セレスティアの声にならない悲鳴で我に返った。当然殺人者が気付かないはずもない。 ・・・しまった!思わず足元の短刀を拾い上げるが・・・ 「まだ残っていたのか・・・」 一人がセレスティアを肩に抱えて連れ戻ってくる・・・。あの子の視線を追った犯人と・・・目が合った・・・。 目配せしてこちらにも一人向かって来る・・・真正面に・・・ 「物騒なモン持ったガキだな・・・ん?」・・・母さんの・・・仇が・・・ ・・・そいつは俺の短剣を凝視したまま動かない・・・動揺してるようにも見えるが・・・ 正面の男の向こうに抱きかかえられたセレスティアが見えた。 「やっ、やだぁっ!」 「まだガキだな・・・だが粒は良さそうだ。売れば金になるかもな」 「まぁガキはひん剥いてみないとわかんねぇっスよ」 そういって男達は血に染まったナイフでセレスティアの服を切り裂く。 「ひっ!いやっ、いやぁっ!」 「あーあ・・・暴れるから傷つけちまったよ」 「へへ、見てくださいよ。膨らみかけっスよ?こういうのもウマイもんっスよ」 「てめぇの趣味なんざ聞いちゃいねぇよ」 セレスティアの白い素肌・・・右胸と左足に滲んだ・・・血・・・の・・・ 一瞬目の前に幕が降りたように見えて・・・目の前の邪魔なものはドサリと音を立て倒れた 「あーそっち終わったの・・・か・・・?!」 男達との距離が急激に縮まった。いや、俺が距離を縮めた。 いやらしい下衆な目をした男の正面に立つと顎の下から短刀を突き上げた。 顔に血を浴びながら・・・短刀を引き抜いて首を横に切り払う。血しぶきを上げながら男は倒れていった。 最後に残った男もセレスティアを地面に落すとすぐさま構えたが・・・既に俺は奴の背後にいた。 「ア・・・アサシンダガー・・・?何故ガキがそんなものを・・・」 言い終える前に首を刺そうとしたが、とっさに飛びのかれて背中に傷を負わせただけだった。 短刀からずっと黒いオーラが吹き出ているように見える・・・あきらかに自分の能力が上がってるのがわかる。 ・・・こいつを殺したい・・・ 正面から切りかかってきた男の側面に踏み込み、わき腹から心臓に向けて突き刺す 傷口から血の泡を出し・・・口からも血を吐き・・・男は地に伏せた。 セレスティアの方を見る・・・無事だったけど・・・ずっと・・・怯えた瞳で・・・俺を・・・ −俺は・・・護りたかったのか・・・それとも・・・殺したかったのか・・・− ・・・最悪な目覚めだ・・・。こういうときは・・・アレなんだよな・・・。 ベッドの上で頭を振りながらドアの向こうにいる人の気配に声をかける 「今起きたよ・・・聞き耳立ててないで入って来い。」 扉がギィっと音を立てて開きウサ耳の女アサシンが入って来た。 「趣味で聞いてるわけじゃないわよ・・・うなされてたら気になるもんでしょ?」 「どうせ殺しの仕事だろ・・・?あの夢見た日は毎回そうだ」 「じゃ、話が早いわね。今回は少し変わっててね・・・標的は神父よ」 「神父殺しなんて教会敵に回していいのか?」 「教会からの依頼だし、あんたも教会からうちに送られた部類でしょ?」 「・・・・・・」 あの後・・・騎士団に保護された俺たちは教会に孤児として身を置いたわけだが・・・ 教会という場所はこっちの世界の人員発掘にも貢献しているらしい。 辺境の遺跡発掘の仕事と言われた俺はアサシンギルドに連れてこられた。 マスターは「どうするか選ぶ権利はやる」と言ってくれたが・・・ 一言も口を利かないセレスティアから逃げるように・・・俺はこの道で生きることを選んだ。 親父もアサシンだったがギルドに脱退の挨拶をしに来た帰りに 一部の欲に目がくらんだ連中に襲われて行方不明だそうだ。 丸腰だったらしいし生きてはいないだろう。 俺達を襲った3人もそのグループで、残りはギルドで始末をつけたらしいが・・・ まさか親父の形見が俺の仕事道具になろうとは・・・な。 「で?教会に狙われるなんざ半端じゃない悪党な神父様だな。」 「まぁ教会もあんたみたいな人材送ったり裏はけっこうあるんだけどね・・・ どうにも引き取った若い女の子達を自分の慰み者にしてるらしいわ」 「けっこうなご趣味で」 「教会側も自分達から身体預けてくる相手には黙認してるらしいんだけど こいつの場合は力ずく、まぁレイプしてるわけ。とんでもない聖職者ね」 「神なんぞいないからな・・・善人だろうが悪人だろうが死ぬ時は死ぬワケだ」 「もちろん発覚したら処分されるけど・・・こいつは発覚してないのよ」 「意味がわからんね」 「この神父様の趣味は快楽殺人のオマケ付き、犯ったら拷問して殺しちゃってるのよね」 「いっそスカウトすればどうだ?殺人大好き者なんてアサシンギルドぴったりじゃないか」 「狂った殺人家なんて願い下げよ。あくまでビジネスと割り切れないとね」 「俺は普通の護衛任務とかのほうが好きなんだがな」 「失敗しなきゃ殺しが好きでも嫌いでもこっちは関係ないわ」 「・・・」 「で?やってくれるの?アルフレッド」 「ああ・・・夢見悪くてイライラしてるからな。うっぷん晴らしてくるさ」 「潜入とか護衛はたやすいだろうけど本人が殺し大好きでも聖職者だから。回復魔法とかで仕留めるの辛いかもね」 「不本意だが殺しは得意でね・・・」 着替えを終えると机の上のアサシンダガーを2本腰に収め、そのまま部屋を後にする。 「護りたければ騎士・・・殺したければアサシンになるってか」 夢で見た怯える少女の瞳が頭にちらついて・・・すぐに消えた。 あとがき みなさんハジメマシテ。文字書き初挑戦な者です。 最近停滞気味なので試しに自分で書いてみようかなー・・・と試したらプロローグだけで終わってしまいました。 本当に書きたかったのは神父様がアコたんいっぱい拷問して殺しちゃうトコだったはずなのに・・・。 キャラにこだわらないほうがいいかなーと思いつつもマスクドさんとか復讐モンクさんとかキャラが立っててカッコイイ ということで少しだけキャラ設定してあります。以下に補足紹介 アルフレッド・・・愛称アルフ。アサシンダガー2刀でVIT低いのにタフなAGIカンストアサ(笑) アサシンダガーにもっと愛をっ!と思ってる作者です。 セレスティア・・・愛称セレス。基本的にロマンチスト。勘がすごく鋭い。のんびり屋でご飯食べるのが遅い 次回作があればアコになってるかな・・・?また襲われそうですが・・・ラブコメ王道っ!(笑) オリヴァー・・・セレスの兄ちゃん。2極DS型ですが、まだLv低くてSP少なく撃ち止めな所をやられました。合掌 ウサ耳アサたん・・・実はアサシンギルドマスターの娘。若いが腕はいいらしい では、次回があればまた