屋敷の中 彼は歩いている 依頼されたのはターゲットのみの暗殺 しかし彼はすべてを殺して回っている 普通の暗殺者ならばそんなことはせずに標的のみにしぼる だが、彼は「殺す」ことだけを楽しんでいた 玄関から入って十歩くらい進んだ 「屋敷の中に血の匂い振りまいてやってくるなんて」 声がした 月の光が窓から差し込んでいる この回廊も少しは明るい 「無礼者、そして愚か者め。わざわざ死にに来る馬鹿がどこにいる」 声の主は男か、そんなことはどうでもいい 「今この場にいるだろう?もっとも、俺は死ぬ気はないがな」 「この屋敷から生きて帰れると思うな」 「それはこっちのセリフだよ。」 明かりがついた、月明かりだけだった場所がにわかに明るくなる 人数は・・・5匹か、腕の立つものばかりを集めたってところか 「かかれ!!」 先に騎士・クルセイダーが2人同時に掛かってくる 横と縦からの斬撃 「・・・遅いな」 軽々とかわす。そんなのにあたってなどやれない 騎士のほうは腕を切り落とした後に首を クルセイダーの方は頭を縦に切り裂いてやる 「ふん、屋敷の廊下を汚くするなんてそれでも守護兵かよ?」 脳や血液をばら撒いて倒れる二人 そして動かない後方2人を無視してもう1人へと向く もう一人はウィザードすでに何かを詠唱している 「はっ!!」 持っていた短刀を投げる短刀は狂いなくウィザードの心臓へと刺さった 倒れる前に接近し短刀を抜き、ウィザードを蹴り飛ばす 「寝てな。」 リーダーらしき男はやはり騎士でこちらに向けて剣を構えていた もう一人は女のハンター 「・・・」 騎士は切りかかってくるさすがに今までのとは腕が違う だが、場所は室内障害物が無数にある場所 俺は壁、柱、時には天井などさまざまな場所を足場にし相手を翻弄する 「く・・・!」 騎士がいらだたしげに声を出した 追いきれないのだろう、そう簡単に追いきれても困るがな 「残念だったな」 「なっ・・!?」 天井からそのまま急降下し相手の脳天から短刀を突き刺した 勢いがありすぎたのか少しだけ相手の首が変な方向に曲がっていた 短刀を抜き去りハンターの方へと向ける 「後はお前だけだ」 ハンターは弓を構える俺はさっきと同じように場所を最大限に使い移動する 動体視力に優れるハンターでもその姿は追いきれないのか向いている場所はどれも俺が2つ前に過ぎた場所ばかり 「見えないなら、見えるようにしてやろうか?」 ハンターのすぐ隣に降り立つ 「くっ・・・このぉ!!」 弓をこちらに向ける、その瞬間 「てぇっ!!」 ハンターを蹴り飛ばした 飛ばした先は柱、だが蹴り飛ばされたハンターより早く俺は柱へと張り付いた 「蹴り穿つ!!」 そして柱に近づいたハンターをさらに上へと蹴り飛ばす。さっきの蹴りより力を込めた ハンターの体はさらに上へと上がり ちょうど中央にあったシャンデリアへと激突した 「ふんっ」 俺は一回降りてまた柱を足場にしてシャンデリアへと飛ぶ ハンターはまだ生きてるのかシャンデリアをつかんで何とか落ちないでいた 時間の無駄だが 俺は短刀を構え、シャンデリアを吊っている部分を切った 落ちていくシャンデリアとハンター ハンターの顔は信じられないという表情だが、こんなのは誰が見ても信じられないだろう すさまじい音を出して地面にぶつかったシャンデリア そこからはつぶれたであろうハンターの血が広がっている シャンデリアの形のせいか、少し離れた場所にはハンターの首や足の一部が転がっていた あの音でやっと気づいたのかターゲットが出てきた ターゲットはその凄惨な状況見て何が起こったかわからない様子だった 「あぁ、その表情のまま、何も知らないまま死ねるのは苦痛ではないだろう?安心して去ね」 首の後ろから短刀を突き刺す 短刀は口から飛び出ていた この場所にもう用はない、さっさと戻るか 翌日・深夜 「全部殺したなんてね・・・」 「信じられないか?」 「いいえ、様子は見てきたわ。ほんと、あそこまでできるなんてね」 「なんだ、あんたは俺を信じてたんじゃなかったのか」 「そういうわけじゃないけど・・・。」 「けど、なんだ?」 「あんなことが本当に人間にできるのかって・・・ね」 「試してみるか?」 「遠慮するわ。」 「次はもうちょっと楽しみがいのある仕事を頼む。あまりにつまらない」 「あなたが強すぎるのよ。本当に・・・」 「・・・・」 「?どうしたの?」 「朱い・・・」 「え?」 「朱いな・・・・」 「あぁ・・・月ね。そうね・・確かに朱いわ」 「・・・嫌な月だ。」 「あ・・ちょっとどこへ」 「今日なら・・・・」 「・・・?」 「今日なら・・・あいつに会えそうな気がする」 「・・・だれのこと?」 「それじゃあ、お互い生きていたらまた会おう。」 「ちょ・・ちょっと!!」 「今日なら会える気がしていたよ」 男がもう一人の男と対峙している 「・・・・」 黒い男は何もいわずにこちらを見ていた 「昔、あんたを見たことがある。覚えているかは謎だけどな」 黒い男は少しだけ口を開いて 「貴様、あの時の小僧か」 「あぁ、そうだよ。」 片方の男は短刀を握る 「なるほど、俺を殺すか」 「あんたが教えてくれた、人を殺す・・・と言うことをな」 「自らが生み出した殺人者か。よかろう、自らが生み出したものは自らの手で消さねばなるまい」 黒い男も短刀を構える 奇しくも両方武器は同じ 「さぁ・・・殺しあおう」 続