ゲフェンダンジョン3F いつも通りの狩り 単調すぎてつまらなさを感じる ずっと一人で、同じことの繰り返し 「セフティウォール・マグヌスエクソシズム!!」 これで何匹目だろう・・・。 「はぁ・・・」 近くの岩場に腰かけて、残りの青ジェムの数を数える 「60・・・70・・・・・80・・・・・90個かぁ・・・」 ずいぶん使ったんだなぁと感じつつ、まだまだ行けると思っていた 「はぁ・・・」 何度目かの溜息 私もいい年だし、ずっと一人というのも・・・ 「彼氏かぁ・・・」 ポツリと呟く、最近自分の周りにはカップルが多い 私だけ取り残されている感じがする 「まぁ・・その内できるよね」 自分に言い聞かせて、立ち上がり 「さ、続き続き」 立ち上がって、周りを見る 馬の鳴き声、獲物だ 「ナイトメアかな、数多そうだけど・・・」 青ジェムを数個取り出し 音のするほうへと歩く 「4〜5・・・かな・・・」 周りに他の敵は居ない、障壁を張り詠唱を始める あっちが気づいた頃には詠唱は終わっているはず ナイトメアが気づいて走ってくる、でも遅い あとは真名を唱えるだけ 「マグヌス・・・・・」 ふと、地面が揺れた それと同時に体が動かなくなる 「な・・・んで・・・」 そこでやっと気づいた 馬が一箇所にまとまっている事がどういうことであるかに 「まさか・・・ドッペル・・・ゲン・・ガー・・・・」 ゲフェニアダンジョンの主、最近のボスは色々なスキルを使うと聞いていた 「まさか・・こんなスキルまで・・」 スタンした状態では何も出来ない、障壁は今にでも消えそうで薄い 「く・・早く・・動いて・・・・」 中々動かない自分の体 必死に動かそうともがいても動かない そしてついに・・・ 「あ・・・・」 障壁が・・・消えた 消えた次の瞬間に来たのは大きな衝撃 「ぐっ・・・」 ナイトメアの体当たりをまともにくらって後ろに飛ばされる ドッペルゲンガーだけが私に歩み寄ってくる 「くぅ・・・テレポー・・・・」 逃げる前に、右足に痛みが走る 「う・・・ぐ・・ぁ・・・」 集中が中断され術は発動しない ドッペルゲンガーの剣が私の足を突き刺している 私は痛みに耐性があるわけじゃない だから倒れた、痛みに耐えられない ドッペルゲンガーは足に剣を突き刺したまま動かない 「う・・いた・・い・・・」 私はそれでも必死に逃げようとしていた ふと剣が動いた、突き刺した部分から下に 「え・・・や・・・いた・・・あぁぁぁぁぁっ!!!」 剣を下に動かすと言う事は、私の足が切り裂かれていくという事 「やめ・・・やめて・・・うあぁぁぁぁぁっ!!!」 ザクザクと音を立てて切り裂かれる 骨ごと二つにされている 剣が足から取り払われた時、私の足は三本になっていた 「いや・・・いた・・・うぅ・・・ぐ・・・」 ドッペルゲンガーは最後に私の喉を潰した 逃げられないように、傷を治させないように 口から出るのは呻く「音」だけ ドッペルゲンガーは後ろに下がり、入れ替わりで5匹のナイトメアが出てきた 何をされるか・・・なんて判っている 念体の癖に・・私を食べるつもりでいる 「う・・・あ・・くぅ・・・」 足は動かない、手だけで必死に逃げる そんな必死さをあざ笑うかのように まだ無事な右足にナイトメアが食いついた 「っ!!!!!」 肉がつぶれる音がする、骨が砕ける音がする 「あ・・・あ・・・・・う・・・」 叫びたい、でも叫ぶことなんて出来ない 逃げたい、でも逃げられない もう1匹は私のわき腹に食いついた いや、食いちぎった 「あっ・・・うっ・・・」 無くなった部分に左手を置いてみる いやな音とともに、暖かいものが手についた 私の血・・・・・ 右手に、3匹目が食いつく もう声なんて出ない 叫びたいほど痛いのに・・・叫べない 骨が砕ける、食いちぎられる 逃げれない現実 もう・・・どうでもいい・・・・ 貪る音が響く場所 そこにあるのは血と、人の部品と、食べる者 人の原型は無い 腕と、足は無く、腹より下は欠け、内臓が出ている そしてソレを引き出すように口を突っ込むナイトメア もうどれくらい経ったのかなんてわからない 私の意識は薄れていく そのとき見えたのは妹の顔 ずっと前に死んだ・・・妹の顔・・・ あぁ・・・、妹も・・・・こんな感じで食べられたのかな・・・ 痛かったんだね・・・・ 私も・・・今行くから・・・ これからは・・・・ ずっと・・・・ずっと・・・・・・・一緒・・・だからね・・・・ もう・・・離れない・・・から・・・・・・ ドッペルゲンガーとナイトメアが立ち去った後に残ったのは 血の海と、一つのロザリオがその血の海の中で場違いなほど輝いていた