プロテンラ ん〜・・・、今日もいい天気。 こういう日に背伸びするのって気持ちがいい。 よし、たまには別の場所に羽伸ばしてみようかな。 そう思い立つと 私は姉と妹にモロクまで行ってくる旨を伝え、東門まで行く。 プロンテラ東門。 いつもは倉庫を利用するだけのカプラさんに転移を頼んで、今日はモロク行き。 「それじゃモロクお願い。」 カプラさんは笑ったまま頷いて私を転送する。 歪んだ視界が元に戻るとそこは砂漠の町 「あっつ〜〜〜い・・・」 涼しかったプロンテラから一気の暑いモロクへ。 温度の急激な変化はちょっときつかったかな、でもすぐ慣れるわ、うん。 慣れるまでちょっとぶらついてこよう。 「・・・・・・・・・」 露店を見ているうちに慣れちゃったな・・・。 さ、次はピラミッドに行こ・・・ 「ぶっ!!」 そんな事考えて歩いたら急に転んじゃった・・・。鼻が痛い・・・。 周りの人が何事かと思ってこちらを見る。 「あの・・・大丈夫ですか・・・?ヒールいります?」 女プリさん、お気持ちはありがたいですが。 「全然大丈夫だから良いよ。」 転んだ程度でヒール貰うなんて恥ずかしくて出来ないっての。 私はすぐにその場から立ち去る。 「何も無いところで転ぶなんてなぁ・・・・」 後頭部をすこし掻きながら 「ま、いっか。行くよフィー」 相棒である鷹の名前を呼び、武器であるハンターボウを握り直し、ピラミッドへと入った ピラミッド3F 「ふぅ・・・。」 私は順調に狩りをしていた。 ミミックが来たりしたらすぐ逃げるようにしていた。 勝てなくは無いけど、罠の消費が痛い。 ただでさえ最近は金欠なのに・・・。 3Fには東西南北に4Fへの階段4つある。 ドコを通っても行けるのだが、私は西側から行くようにしていた。 3Fは溝が多く、自然と道の中央を歩く形を取る。 足元に気をつけながら、私は歩いていく、フィーも私と一緒に行動する。 「あれは・・・・」 通路の先にある、『何か』の塊。 嫌な予感を感じつつ私は歩を進めた。 そして、その『何か』が判った時私はすぐに逃げればよかったと後悔した。 通路の先にあったのはモンスターハウス その数は10匹を超えているだろうか。 「な・・なんでこんなところにこんなに!!!」 私は必死に罠を仕掛けながら来た道を戻る。 2Fまで行ければ・・・。そう考えていた。 だが、MHに気をとられすぎて周囲の方への注意が薄れていた事に気づく。 私の右足を何かが貫いていく。 足元を見ると1本の矢 そして、足から流れる私の血・・・ 「う・・・うあぁぁぁぁぁっ!!!」 傷を認識したとたん、右足に痛みが走る。 状況を理解するまで数秒掛かった。 溝の向こうにアーチャースケルトンがいる。 あれが私の足を射ったのだと・・・。 アーチャースケルトンが次の矢を放つ前に、私は痛みを堪えながらアーチャースケルトンを倒した そして逃げようとして後ろを向いた。 私は絶望と言う物を知った。 私がもたついている間に、魔物はすぐ近くまで来ていた。 動きが緩慢なマミー 短剣を持ったソルジャースケルトン 箱から目の様な物が見え隠れするミミック 私の相手に出来る範囲を超えている。 足に怪我が無くてもこの数では勝てない、と私の頭脳が告げている。 私はすぐに蝶の羽をだそうと道具袋に手を伸ばす。 その瞬間ミミックが口であろう部分をあけて迫ってきた。 その部分には鋭い牙がついている。 まともに歩けない状態の私にとってはかなりの恐怖だ。 道具袋から取り出した蝶の羽を使おうとして腕を振り上げかけた刹那 腕に痛みが走る。 振り上げようとした腕は肘から先がなくなっている。 私はまた、その状況を理解できずにいた。 ただ肘から先の欠損した腕は血を噴出していた。 「うあ・・あ・・・く・・・・あ・・あああああああああ!!!!!」 状況を理解した脳は、一呼吸遅れて激痛の信号を受理する。 激痛に叫びながら私はその場に倒れこむ。 さっきのミミックが私の腕を喰っている。 わずかにしか見えない目の様な赤い光が、嬉しそうに歪むのが見えた。 絶望という文字が浮かぶ・・・。そしてすぐに死と言う言葉が浮かぶ 「死ぬ・・・の・・・。こんな・・ところで・・・・嫌だ・・嫌・・・死にたくない・・・。もっと生きたい・・・」 ゆっくりと寄って来る魔物の群れ。 左手しかない状態であがこうとする。 どうにもならない。どうにも出来ない。どうする事も出来ない。 左腕は・・・、切られた・・・。 伸ばしていた左手は切られて・・・宙に舞って・・・床で1回跳ねて、また床に落ちる。 「あ・・ぐ・・・」 意味を失った呻きだけが、私の口から漏れる。 ソルジャースケルトンは私の腹部に持っていた短剣を突き刺して、乱暴に切り裂く 「ぎゃあああぁぁぁ!!!!」 私の声とは思えない・・・人から発せられたとは思えない叫びが響く。 「い・・痛・・・いたい・・・。いっそ・・殺して・・・・」 床に落ちていた腕はミミックに喰われてもうなくなっていた。 あぁ・・・私も食べられるんだ・・・・。 ボンヤリとそんな事を考えていた。 マミーは私を殴りつける。 ソルジャースケルトンは私を切り裂いていく。 ミミックは・・・まだ何もしない。 殴られるたびにくぐもった呻きが口から漏れ 斬られる度、私の口から悲鳴が溢れる。 足はもう折れて、動けない。 血の溢れる腹部と、両腕。 それでも何故自分が生きていられるのか不思議だった。 マミーもソルジャースケルトンも私への興味を失ったのかその場から消えた。 「助かった・・・・?」 そんなわけはない・・・、とすぐに思い知らされた 「〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」 すでにその叫びは声になっていない。 折れた両足を複数のミミックが喰っている。 バキバキと骨の砕かれる音、先の痛みなど遙かに超えた痛み。 「や・・・やだ・・・。食べないで・・・よ・・・。やだよ・・・・誰か・・・誰か・・・くはっ!!」 切り裂かれた腹部からミミックが私の内臓を喰らっている。 引きずり出される自分の臓物。 引きずり出され、引きちぎられ、喰われる。 咳き込み、吐血し、涙を流し続ける。 夢であって欲しいでも・・・ ビチャ、ビチャと血の滴る音。異臭。自分の周囲に広がる自分の臓物のカケラ。 美味しそうに、嬉々として食べるミミックの姿。 何より私自身が感じる痛み。これが夢で無い事をはっきりと告げられている。 すでに両腕両足は無い。 唯一の救いは、感覚が失われつつあること。 あぁ・・・何で私はまだしつこく生きているんだろう・・・・ 自らが食われる音を聞きながらそんな事を考える。 フィーは・・・どうしたのかな・・・・。 自分の相棒の事を考える。 食べられたのか・・逃げたのか・・・。 今の私にはどっちでも良い・・・。もう私はこの世から消える・・・ アァ・・・・モウ・・・オワリ・・・カナ・・・・ 眼前に迫ったミミックの口 ゴメン・・・・モウ・・・・カエレ・・・・ナイ・・・・ 最後の言葉を送る。 顔に何かが刺さる音と共に私の視界と意識は真っ黒になった。 彼女の姉と妹が駆けつけたとき、その彼女の存在はもう消えていた。 血溜まりに落ちていた弓。それが彼女愛用の弓だった。 今ではもう、彼女を知ってるものは2人だけ。 彼女の姉と妹が持っている彼女の愛用の弓だけが・・・彼女の唯一の存在の証だった。