『闇の拷問人』 「う・・・くぅ・・・」 私はどうしたのだろう・・・。 ここはどこだ・・・? 頭が重い・・・。 目をあけてなんとかあたりを見回す・・・石造りの薄暗い室内だ。 天井から下げられたランプが、じめじめとした室内をかすかに照らし出していた。 ・・・動けない・・・。 改めて自分の体に目を落としてみると、金属製の椅子に鎖で拘束されていた。 後ろ手に縛り上げられ、足は大きく開かれたままそれぞれ椅子の足に固定されていた。 服は脱がされていなかったが、鎧や具足などは剥ぎ取られていた。 なんとか抜けられないものかと体を捩ってみるが、ただガチャガチャと鎖が鳴るだけで、 少しも緩む気配はない。 ようやく、朦朧としていた意識がはっきりしてきて、私は自分の置かれている状況を理解した。 「そうか・・・私はあいつらに捕まって・・・」 先のGvGで、攻め入った敵対ギルドに破れ、捕らえられてしまったのだった。 ギイィィィィ・・・ 耳障りな音をたて、私の正面の錆び付いた鉄の扉が開き、 漆黒の鎧を纏った騎士と、こちらも漆黒のローブに身を包んだセージが現れた。 敵対ギルドのマスター・・・とその右腕だ。 セージが入り口付近に据えられた松明に手をかざすと、音も無く火が灯り、辺りを照らし出す。 私はその漆黒の騎士をきっと睨みつけた。 しばし息苦しい静寂が辺りを包む。 「ふふ、『紅の神風』が・・・いい様だな」 先に口を開いたのは相手だった。不敵な笑みを浮かべて私の脚に目を向ける。 その視線に気づき、私は自分の足が大開に固定されていることを思い出した。 羞恥のうちに身を捩って隠そうとするが、結果は先ほどと何も変わらなかった。 『紅の神風』・・・幾多の戦いで、疾風の如き剣で勝利を築き上げてきた私に、 どこぞの誰かがつけた通り名だ。紅というのは私の髪色から取ったものなのか、 私の後に舞う血飛沫を表したものなのかは定かではない。 「君の噂は兼ねがね聞いていたよ。どれほどのものか楽しみにしていたのだが・・・」 騎士は私に歩み寄り、私を見下して続ける。 「『黒き死神』には敵わなかったね」 「黒き死神・・・?」 怪訝そうな私に対し、さらに続ける。 「この私の二つ名だ。これでも裏の世界では有名なのだよ?」 そう・・・私はGvGの混戦の中、この男と戦い、そして敗れた。 私は得意のスピードで不意を突き、勝利を確信した・・・が、 その次の瞬間、その口元に不敵な笑みを浮かべ、この男の大鎌が閃いたと思うと・・・ 気が付いたらここに拘束されていた。 悔しいがまるで歯が立たなかった・・・不意をついたはずの私をカウンターでいとも容易く・・・ 今の私には、この男の力量を窺い知ることさえも出来なかった。 呆然としている私を尻目に、騎士はさらに続けた。 「君のギルドは・・・君がやられたのを見て、撤退していったよ。白状なものだね」 「そう・・・それはよかったわ」 「ほう、どうしてだい?」 「そのままあなたと戦っていたら、全滅は必至でしょうから」 「なるほどね」 騎士はわざとらしく肩をすくめて見せた。 「君にアジトの場所でも吐いてもらおうと思っていたのだが・・・その様子だと無駄かね?」 「例えこの身がどうなろうとも・・・仲間を売ったりはしないわ」 私はきっと睨みつけた。 「それなら仕方ない・・・君の体に聞いてみるとしようか」 そういうと、無防備に晒された私の太腿に手を這わす。 「『黒の死神』はこういうのが趣味の変態なんですね」 私は嫌味をこめてそう言うと、騎士を顔に唾を吐きかける。 「おっと、これは失礼。君の体が誘惑してきたもので・・・ね」 騎士は唾を指で拭うと、それをぺろりと舐める。 そして、左手を挙げてセージに何か合図を送ると、今まで終始無言だったセージが前に進み出た。 手で空中に魔法陣を描くと、声高らかに呪文を唱えた。 「サモンモンスター !! ・・・出でよ闇の拷問人よ!」 魔方陣から禍々しい気が放出される。魔方陣が怪しく紫色に輝いたと思うと、 どす黒い瘴気と供に二つの影が姿を現した。 「なっ・・・これは・・・?!」 私は驚いて目を見開いた。魔方陣から現れた二つの影・・・片方は長身で細身、怪しいマスクを被り、手には鋸状の短刀を持っている。もう片方は大柄の筋肉だるまで、手には大きなペンチのようなものを持っていた。 強力な魔物・・・リビオとフェンダークである。 「ひゃはははっ! お呼びですかぃ、マスター」 リビオが下品な笑いと供に声を張り上げる。 「うむ、そこの彼女の拷問を頼む。アジトを聞き出してもらいたい」 そういって私を顎で指す。 「ひゃははっ! お任せくだせぇ!」 「任せたぞ。ただ、殺さないように気をつけてくれよ」 「了解ぃ。・・・だそうだぜフェン。やりすぎんなよぅ」 フェン・・・フェンダークは肩で大きく、ふーふーとむさ苦しい息をしているばかりである。 「あなたたち・・・闇の住人との契約は固く禁じられているはず・・・それを何故?!」 私が鋭く言い放つと、騎士は鼻で笑い、 「こういう変わった僕も面白いだろう? それだけさ」 そういい残すと、セージを引き連れて部屋を出て行った。 「俺たちはなぁ、マスターにやられたんだけどよぅ、 下僕になれば命は助けてやるっていうから従ったまでよぅ。 拷問役を任せるってんで、暇もしなそうだったしな! ひゃはははっ!」 ・・・聞きもしないのにリビオ勝手に喋りだす。 「くっ・・・そんなことが許されると・・・!!」 最大の禁忌を平気で犯す、あの騎士に対してやるせない怒りが込み上げてきた。 「さぁて・・・それじゃあそろそろ始めるとしようかぁ。 痛い目みたくなかったら、早めにゲロッちまうこったなぁ! 最も、それじゃあ俺がつまらんがな、ひゃはははっ!」 不気味な笑いを浮かべながらリビオとフェンダークが私に歩み寄ってきた。  まず、リビオが短刀を上に放り投げ、鮮やかにキャッチするとそのまま私めがけて振り下ろす。 「ぎ、ぎゃぁあああああぁあ!」 右の乳房を切り裂かれ、私はたまらず絶叫を上げた。鋸状の刃は、一振りで何度も抉ったような無残な傷をつけた。黄色い脂肪がはじけ、血が噴き出す。 「ひゃははっ! いい声で鳴きやがるぜぇ」 リビオは短刀に付着した血をべろりと舐め上げた。 続いてフェンダークが、手にもったペンチで私の左脚の小指を押しつぶす。 ごり・・ぶしゃ・・・ 「っ・・・ぎゃぁああああっ!」 一瞬痛みで声を上げることさえ出来なかった。 「ひゃはははっ! 早く言わなきゃ指全部潰されちまうぜぇ?」 リビオはさも楽しそうにそう言うと、今度は左の乳房目掛けて短刀を振り下ろした。 「ぐ・・・ぐぅ・・・だ、誰が言うものですか・・・ぎっぎゃぁああああっ」 私は必至に声を絞り出す。が、その瞬間フェンダークが、左足の親指を押しつぶした。 「そうこなくっちゃなぁ・・・ひゃはははっ!」 リビオとフェンダーク・・・かなり上級の魔物ではあるが、本来ならば私の敵ではない。 しかし今は拘束され、武器も防具も無いのでは例え自由の身だったとしても勝算はない・・・。 リビオは何度も何度も私の乳房に刃を振るった。間もなくして、私の乳房だったものは辺りに飛び散り、乳房のあった場所には小さな肉片がだらりと垂れ下がるのみとなった。 足の指も7本が潰され、力なくぶらさがっていた。 「う、うぐっ・・・」 ・・・右足の親指が潰された。 その頃には、もはや私は叫ぶ気力さえも失ってしまっていた。 感覚も麻痺してきたのか、痛みも先ほどよりはましになっている。 変わらず、ふーふーと肩で荒く息をしながら、フェンダークは次の指へと取り掛かる。 「ひゃはははっ! アジトの場所はどこなのかなぁ?」 言い終わるが早いか、リビオは私の太腿目掛けて短刀を振り下ろした。 肉を引き裂く嫌な音が辺りに響く。刃は骨まで達したようだ。 「こ、こんなことしても無駄よ・・・早く・・・殺しなさい・・・うぐっ・・・!」 私の返答を聞いて、リビオは骨を撫でるように短刀を動かした。 ごりごりというくぐもった音と私の呻き声が薄暗い室内に響く。 「ひゃはははっ! じゃあこれはどうかなぁ?」 リビオは私の秘所に刃を押し当てる。そして鋸で切る要領で、私の秘所を抉る。 「ぎ、ぎゃあぁぁぁぁああああ・・・!」 敏感なところを醜く抉られる痛みに、私は悲鳴を上げる。 続けざまに、私の骨盤を切り始めた。 リビオが短刀を引くごとに激痛が走る。 その頃、足の指を一通り潰し終えたフェンダークは、後ろに回り、今度は手の指に取り掛かった。 ごりごりごりごり・・・ 拘束されている椅子の周りには赤黒い血溜まりが出来ていた。 そして、膣を全て切り終えたころ・・・不意に私の腹を、臍の辺りまで引き裂いた。 私の腹の中におもむろに手を差し入れると、子宮を掴み出し、私の目の前で引きちぎる。 「ひゃはははっ! こりゃあ上物だなぁ!」 そう言うと、自分の口の中に放り込んだ。 くちゃくちゃくちゃくちゃ・・・ 味わうように何度も咀嚼し、飲み込む。 「ん〜・・・うめぇ・・・ひゃはははぁっ!」 「・・・殺しな・・・さい・・・」 私は力なく呟いた。もう・・・痛みも殆ど感じない。 乳房を失い・・・女性器も失い・・・ 私の「女」としての部分はもう無くなってしまった。 怒りも、憎しみも、悲しみも・・・もう、無い。 壊されていく自分の体を、夢見心地で眺めているだけだった・・・。 やがて、私の意識はだんだんと静かな、そして暗い場所へと沈んでいった。 私が最後に聞いたものは、リビオのあの下品な笑い声だった・・・。