白い天井。意識だけが徐々に鮮明になってゆく。お昼寝から自然に目覚めた感じ。 あれ?わたし、どこで寝てたっけ?体を起こそうとしても、体が言うことを聞かない。 なぜ?プリーストのお姉さんがわたしを覗き込んでいる。 「動かないで!18番、意識戻りました!」 「拘束しろ!また出血するぞ!」  え?どういうこ…一気にわき出してくる痛み、いや痛みと言うには大きすぎる何か に意識が真っ白になる。 「ヒール!!」 「サンクチュアリ連続展開だ!青ジェム急げ!」  耳元でブルージェムストーンの砕ける音がする。ふたつ…みっつ…。なぜ?なにが? どうして?ともすると途切れそうになる意識で考える。そうだ、わたしはオーク森へ 密かにレベルを上げるために向かったのだ。  わたしは仲間たちと競争をしていた。同じ時間帯で特定フィールドで別々に狩りを して誰が一番早くノービスから卒業できるか。誰でもやったことのある些細な競争だ。 もちろん、壁役を誰かにお願いしたり密かに自分だけで狩りに出るのは反則だ。  しかし彼女はあせっていた。抜け駆けをしようとした。…足がひどく痛む。考える のが面倒になってきた。それでも彼女は記憶をたどった。  みんなと一緒にポリンやルナティックを倒していたのでは勝てない。なにか強めの ものを2度でも3度でも殴れればいい。きっとノービスが狩り場で苦戦していれば、 みんな助けてくれるだろう。そうだ、オーク森へ行こう!町中で見かけるペットのオ ークウォーリアーは外見の恐ろしさとは裏腹に繊細で内気で、獲物にはぴったりに思 えた。その時には。  オークダンジョンの入り口が見えてきたところだった。文字通り沸くように現れた 5体のオークウォーリアーに囲まれ、押さえつけられ、斧を振り下ろされる。何で? オークウォーリアーはもっとおとなしいモンスターじゃないの?これが野生のオーク ウォーリアーなの?彼女の危機に気づいた周りの冒険者の声を聞きながら、彼女の意 識は下半身に衝撃が走った瞬間途切れた。  そうだ、わたしの足は大丈夫なの?押さえつけようとするプリーストに逆らい、な んとか首を起こして自分の体を見る。かけられた布の盛り上がりがおへそがあるはず のあたりで不自然に途切れて血がにじんでいる。これがわたしの体?もう歩けないの? 赤ちゃんも生めないの?い、い、いやああああああああああーーーーーーーー。再び 目の前が暗くなる。 「18番、意識レベル下がりました!」 「なんとかもたせる!リザレクション用意!青ジェムの予備はまだか!」 「救急アルベルタ指令からプロンテラ広域消防!アルベルタで大規模枝事案!重傷者 39名をそちらへ転送!うち7名DOA!なお、重傷者はさらに増える模様!」 「プロンテラ広域消防、当直指令了解!つづいてプロンテラ広域消防より大聖堂救命 救急センター!ただいまの件、受け入れよろしいか?」 「大聖堂救命救急了解、受け入れ体勢よし!…よぉし聞いたとおりだ!ベッドを空け ろ!バイタルが上向いたものは一般病室へ送れ!青ジェムをかき集めてこい!…おい、 18番はどうだ?」 「いったんは覚醒しましたが、再び300まで意識レベルが落ちています。リザの準 備をしていますが、厳しいです」 「…そうか。18番は安楽処置。リザ詠唱中止、ベッドを空けろ」  え?18番って、わたし?安楽処置って何?ねえ、わたし生きてるよ?ねえってば! 聞こえないの?