wiz娘の受難7 過去  −前回までのあらすじ− 自分を酷い目に遭わせた騎士PTを彼等のアジトがある模造都市(PvPアルベルタ)ごと壊滅させたWIZ娘。 彼女は今、首都プロンテラの王立病院のベッド上にいた。  頭が痛い。 ここ数日の出来事が、まるで夢か幻のように思える。 捕まった魔物に孕まされ、助けを求めた騎士PTから酷い仕打ちを受けた。 その後、卵は取り除かれたが、今度は男性を受け入れてた。 思い出したくないし認めたくもないが、私が汚れてしまったのは事実だ。  私はアルベルタ近くの森で倒れていた所を発見・保護されたらしい。 今朝、事情聴取に訪れたプロンテラ騎士団の方から聞かされた。 聴取の内容は『私の体に乱暴された形跡があり、記憶障害もあった為に保護したこと』 そして『PvPアルベルタが隕石によって壊滅した事への関与について』というものだった。 私には騎士PTのギルドマスターに犯されてからの記憶が無い。どうしても思い出せないのだ。 トントン。ドアをノックする音が聞こえる。 「入るぞ?」 それは久し振りに聞く父の声だった。父は病室に入って来るとベッドの横にある椅子に腰を掛けた。 「泣いていたのか?」 そう言うと父はハンカチで私の頬を拭う。 「お前には辛い思いばかりさせるな。」 「・・・父さん。」 長い沈黙。父は何か決心したような表情で、こう切り出した。 「お前にまだ話してなかった事がある。」 「?」 「悪魔と取引してしまった父を許してくれ。お前を失いたくなかったんだ・・・」  −以下、父の回想− サファイアは本当によく出来た子だ。 この子は幼い頃から(実の)親からの虐待を受け、1ヶ月前に私の元に養子として引き取られて来た。 娘はそんな過去を私に感じさせないよう明るく元気に振舞っている。家事も面倒な顔一つせずに進んでこなしてくれる。 学業も優秀でゲフェン魔法学校への進学が決まっていた。(※有名進学校・大学のようなものと考えて下さい。)  しかし、あの日、森に出かけた私達親子を悲劇が襲った。 谷間に掛けられたつり橋が落ち、サファイアが転落してしまったのだ。 谷底には瀕死の傷を負い意識が失った娘がいた。 助けを求めるにも町は遠く、人通りなど無い。諦めかけたその時、悪魔の声が響いた。 「取引しないかしら?」 振り向くと、そこには伝説上の夢魔と呼ばれるサキュバスがいた。 彼女は酷いダメージを受けているようだ。背中には数本の矢が刺さり、肩から胸部にかけて大きな裂傷がある。 サキュバスは言った。 「私は討伐隊に追われこのザマだ。お前の娘も瀕死の状態だ。」 「だが、私(サキュバス)の魂を娘の体に融合させる事で、娘も助かる」と。 私は藁にもすがる思いでその取引に応じた。サキュバスは、にこりと微笑む。 辺りは怪しい魔力に包まれ、夢魔の体から赤色に輝く球体が飛び出したかと思うと娘の体に入っていった。 夢魔の体は灰のように崩れ去った。 娘の体の傷がみるみるうちに消えていく。顔には生気も戻った。 しかし、娘の意識は戻らなかった。あの悪魔は娘の体を乗っ取ったのだ・・・。  −回想の途中ですが、終了− 「あの〜、ちょっといいですかぁ〜?」 突然、私の頭の中に緊張感の無い声が響く。 「魂を融合させたのは本当だけど、乗っ取るつもりは無かったんだよ〜」 「何度も呼び掛けたけど、あなた、心の底に閉じ篭ってたからさぁ? 私が代わりに体を動かしてたんだよ〜」 そう言われて私は思い出した。 つり橋が崩落した事故は、むしろ都合が良かったと思っていた事を。 優しい人(現在の父)に引き取られたが、虐待を受けた心の傷は癒えず、私は死んでしまいたいとさえ思っていた。 そんな私だったが、魔法学校で楽しく生活を送る体(サキュバス)の様子を見て再び表に出たいと願うようになる。 私が表に出たのは魔法学校を卒業した(旅立った)あとの時だった。 「あの時はちょっと長く体を借りちゃったね。ゴメン」 「それと、卒業試験、面倒だったから適当な言い訳して飛び出しちゃった。」 魔法学校での私の記憶が酷くあいまいな理由がやっと判明した。  サキュバスの魂は私に語り続ける。 彼女は私の中で眠り魔力を回復している事。彼女の魔力は私が男と性交する事で大幅に回復する事。 そして、私は彼女の器として最適だったという事を。 「あなた、自分で気付いてないけど凄いわよ?だって、私の魂を受け入れて普通に生活できる人なんて滅多にいないもの。」 「それに可愛いから男には困らないだろうしね〜(^^ という訳で、これからはバンバンえっちしちゃってね〜」 「あ、そうそう。あなたを酷い目に遭わせた騎士PTに仕返ししといたよ〜」 「でも、町一つ壊しちゃった。やりすぎたかなぁ? ☆てへっ☆」 「久し振りに美味しい精液を飲んだから元気でちゃった。やっぱ、若い男はいいわぁ」 「そういう訳だから、これからもよろ〜♪」   突然の告白に頭がクラクラした。 ただ、彼女は私を助けてくれた。昔、事故で大怪我した時も、その後、閉じ篭っていた心も癒してくれた。 そして先日、監禁状態だった私を助けてくれたのも彼女だ。(スティングから助けてくれなかったのは気まぐれかな?) 彼女(サキュバス)は夢魔と呼ばれる悪魔であるが、命の恩人であることに変わりは無い。 私は彼女の魂を受け入れ、生きて行くことを心に決めた。 「・・・で、憎き夢魔がお前の体に憑いてるんだっ!!」 「娘よ許してくれ〜。」 父は大泣きしながら話を続けている。 「父さん、落ち着いて。その取引のお陰で私は生きてるんだよ。」 「それに私は大丈夫だよ。心配しないで、父さん。」 「!! なんて気丈な子なんだ〜〜(T_T)/ウルウル」 父を説得するには時間がかかりそうである。                   to be continued 明かされたWIZ娘の過去。彼女はサキュバスの魂を受け入れ、強く生きようと心に決める。 そんな彼女に訪れる運命とは。次回、最終話『happy/un happy』 お楽しみに。