wiz娘の受難5 覚醒  −前回までのあらすじ− スティングに孕まされたWIZ娘は、騎士PTに助けを求めるが散々な仕打ちを受ける。 その後、騎士PTのギルドアジトに拉致されたWIZ娘はスティングの摘出儀式を受ける。 彼等のギルドマスターはWIZ娘に逆恨みを持つ人物だった。その復讐を強姦(?)という形で果たす彼だったが・・・  俺(♂ハンター)は今、息を切らせて逃げている。 「はぁっはぁっ、おかしい、こんなはずでは・・・。」 拉致した♀WIZがアジトから逃げ出したとギルドマスターから連絡があったのは1時間程前。 俺は渋々、身支度を整えアジトに向った。 俺達のギルドアジトはPvPアルベルタの大豪邸内にある。 PvPマップとは、人と人の果し合い(殺し合い)が超法規的に許可されている場所だ。 時の国王、トリスタン2世がモンスターの襲撃に備え、冒険者達の戦闘スキルを向上させる為に設置させたものだ。 ここには特殊な魔法が施されており、冒険者がダメージを受け瀕死の状態になるとMAP外の教会病院に転送される。 逆を言うと、自分が瀕死の状態となるか、他人を全員病院送りにしなければここからは出ることは出来ない。(※劇中の設定です。) しかし、俺達の場合は違う。 ギルドマスターがルーンミッドガルド王国の建設大臣の弱みを握り、ここの出入りを自由にするアイテムをふんだくったからだ。 まぁ、つまり・・・子猫ちゃんはまだPvPアルベルタ内を彷徨っているわけだ。 慌てる必要は無い。楽勝のハントゲームのつもりだった。 PvPアルベルタに到着した途端、異様なプレッシャー(重圧感)を感じる。 狩人としてのカンが囁く。これは危険だと。 BOSSか?・・・いや、それとは違う今まで体験した事の無い強大な魔力だ。 プレッシャーが徐々に近づいて来る。 俺は愛用の+7ハンターボウを握りしめ、矢をつがえる。 息を潜め、集中力を高める。・・・何者だ? 視界に現れたのは、ぼろぼろのレオタード、マントを身に付けたあの♀WIZだった。 だが、まるで雰囲気が違う。圧倒的な魔力と存在感。 本当に彼女なのか?俺は目を疑った。体がすくみ動けない。 蛇に睨まれた蛙。まさにそんな状態の俺に♀WIZはどんどん近づいてくる。 「くっ、来るな!」 たまらず俺はダブル・ストレイピング(以下DS)を放つ。 しかし、連続で放たれた2本の矢は普通ではあり得ない軌道で彼女から逸れる。 まるで同極の磁石が反発し弾かれるように、だ。 「!?」 再び矢をつがえ、DSを放ったが結果は同じだった。 「何度やっても同じ事よ。」 ♀WIZの冷たい言葉が耳に響く。 「貴方は直接、私に酷い事はしていない。でも、仲間を止めようともしなかった。」 「だから、許さない。」 一段とプレッシャーが強まる。 「ひぃっ?」 俺は情けない声を漏らし、その場から逃げ出した。 「はぁっはぁっ、おかしい、こんなはずでは・・・」 逃げる俺の眼前に氷の壁が出現する。 退路を塞がれた俺が振り返ると、彼女の右手に青白く輝く電光球体が見えた。 ユピテルサンダー(以下JT)。それは、ギリシャ神話の主神ゼウスの怒りとも表現される高位電撃魔法。 魔力によって膨大な電力が直径1m大の電光球体に集中していくのが、魔法に関して素人の俺にでも分かる。 こんなものを食らったら俺の体はケシズミになってしまう。 まずい、これはヤバすぎる! そう判断した私は咄嗟に特別製の蝶の羽(※PvP出入り自由のアイテム。劇中のみ)を使おうとした。 だが、発動しない。 「なぜだっ!?」 「魔力干渉による魔法アイテムの無効化よ。」 動揺する俺に♀WIZは優しくそう言うと、JTが俺に向けて放たれた。 「ま、待ってくれ!俺は悪くな・・」 ヴゥゥゥゥン 不気味な振動音が響く。 反射的に頭を守ろうとした両腕が弾け飛んだ。痛みを感じる間も無く俺は死んだのだろう。 それが最後の記憶となった。  私は♀プリ−スト。 世間では支援プリ(姫)と呼ばれ、皆の人気者である。 ギルドマスターから昨夜の♀WIZがアジトから逃げ出したと連絡があり、彼女を捕獲するゲームだという事で私も呼び出された。 「まぁ、発見しだい私の+6ファイアスタナ−で撲殺して差し上げますわw」(/クスクス) だが、仲間が先に到着しているようだ。どうやら狩りに出遅れたらしい。 PvPアルベルタに到着した途端、私は息苦しく胸が詰まる様な重圧感に襲われた。 何か凶悪な魔物が召還されたのかも知れない。私は周囲の気配を探りながら大豪邸に向って歩く。 焦げ臭い異臭が鼻を突く。見ると黒焦げの物体が3つ転がっている。 よく見ると、それらはかつてハンターの肉体であった物、BSの肉体であった物、アサシンの肉体であった物だった。 既にリザレクション(蘇生修復魔法)が意味を成さないくらい、肉体が破壊し尽くされ、一部が炭化している。 「ちょっ・・ちょっと何これ・・悪い冗談でしょ?」 「はっ!!」 背後に気配を感じ振り返ると、そこには昨夜の♀WIZがいた。 服装はボロボロだが息苦しくなる程の魔力を彼女から感じる。とても同一人物とは思えない。 「こ、これはあなたがやったの?」 私は震え、上ずる声で問う。 こくり。と♀WIZは頷き言う。 「貴方達は私に冷酷非道な仕打ちをした。そのむくい・・・」 「レックスディビーナ!!」 彼女が喋っている途中で私は必死の抵抗に出た。 レックスディビーナ。それは、一時的ではあるが対象者の声帯を麻痺させて魔法の詠唱を封じるプリ−ストのスキル。 「こっ、これであなたは無力だわ」(/クスクス) 私は勝ち誇ったように言い放ち、+6ファイアースタナ−を握り締める。 「覚悟しなさいっ!!」 +6ファイアースタナーが唸りを上げ、♀WIZの左腕に当たる・・・当たったハズだった。 だが、ぶよぶよのゴムを叩いた様な手応えしかなかった。 見ると彼女の体全体が青い光に包まれている。 エナジーコート。それは高位の魔術師だけが使える強力な防御魔法。 ♀WIZは唖然とする私の右手を掴み、ぐぐっと私の体を引き寄せると肘うちを放つ。 ガッ!! 顔面に肘うちを受けたせいで私の鼻骨が折れた。ポタポタっ。鼻血が聖衣を汚す。痛い、痛い、痛い。 間髪を入れず、彼女はナパームビートを放つ。 この魔法は詠唱を必要とせず、術者の魔力を物理的な衝撃波に変換して撃ち出すスキルだ。(※劇中の設定です) バパパンッ!! 激しい炸裂音と共に衝撃で聖衣の胸の部分が千切れ飛ぶ。 お腹の辺りにまでドロリとした温かい物が垂れてくる。 それが押し潰された私の右胸の残骸であると理解するまで数秒かかった。 「がっ、ごふっ・・・ひぁぁぁぁっ?? ヒール!!」 私は涙目になりつつ、鼻と胸を押さえながらヒールを唱えた。体中が優しい光に包まれと、出血が止まり傷が回復し始める。 このヒールがあれば♀WIZ如きに殺される事は無いはず。なんとか騎士君やギルドマスターが来るまで耐える事が出来れば・・・ そう考え、私は少しでも落ち着きを取り戻そうと必死だった。 「何か妙案は浮かんだかしら?」 声を出せないはずのWIZが喋る。 私は動揺し、後ずさる。 チュドーーーン!! そこには何時の間にかファイアーピラーが設置されてあった。 私は爆風で吹き飛ばされ、地面を転げまわる。 足の骨と筋肉が辺りに四散していた。私は今の一瞬で両足の膝から下を失った。 「はぎゃぁっぁあぁっ!いやぁいやぁぁ〜〜ひぃっ、ひっヒールっ!! ヒール!!」 ヒールは対象者の傷を癒し回復してくれる奇跡だ。だが、完全に破壊され無くなってしまった物は元には戻らない。 足からの流血は止まり傷は塞がったが、膝から先は戻らなかった。 私は仰向けに倒れ、聖衣は埃と血に塗れボロボロ、両足を失って身動きが取れないという惨めな状態だった。 「私が味わった痛みと恐怖を、貴方にも味わってもらうわ」 ♀WIZはそう言うと側に落ちていた+6ファイアースタナーを拾い、それで私の顔面を殴打しようとする。 私は咄嗟に両手で頭を守ろうとしたが激痛は腹部から来た。お腹が焼けるように熱い。 「うごっ!?・・・うっ、うぉえぇぇぇえっ」 ビチャビチャ。朝食のパンとミルクティーの混合物を嘔吐してしまった。 「今のは利子分よ。」 彼女はそう言うと、苦しさに悶える私の顔面に容赦ない一撃を振り下ろした。 ゴっ!! 私の鼻は陥没し、鼻血が噴水の様に飛び散った。と同時に殴打された周辺が発熱し焼け爛れる。 「はぎゃぁぁぁ!!! はびぃっ、はひぃぃ、はぁっ、はぁ」 流血で目が眩み、激しい痛みで意識が飛びそうになる。 だが、先程のヒールの効果がまだ残っていたのだろうか、顔面と腹部の傷が回復していく。 「へぇ・・・簡単に死ねないっていうのも大変ね。」 彼女は、まるで悪魔の様な笑みを浮かべる。 私は生きた心地がしなかった。その恐怖と絶望感に股間が小水で濡れ始めた。 「あらあら。これ以上、辱めるのも酷だわね。」 ♀WIZはそう言うと、私の頭部に照準を定めFBの詠唱を始めた。 彼女位の魔力ともなるとFBの威力は艦船に搭載されている大砲クラスだろう。 直撃を受ければ私の頭部なんて簡単に吹き飛んでしまう。そんな事になれば蘇生は不可能だ。それは完全な死を意味する。 「まっ待って、お願い!やめて!」 大粒の涙をこぼしながら命乞いする私の頭上に、今まで見た事も無い大きさの炎の矢が降り注ぐ。 「たすけ・・!」 それが私の断末魔(最後の叫び声)になった。 to be continued  −次回予告− 覚醒したWIZ娘の前に次々と倒されていく仲間達。そこへ♂騎士が到着する。 果たして彼に逆転の目はあるのか? 次回『復讐』(仮) 来週も、サービスサービスぅ!wWw