[!]このSSには残虐な表現、性的な表現が含まれています。  〜人形の言葉〜  私は人形です。外見は、女です。プリーストという名の職業の格好をしています。  昨日も、今日も、明日も、絶える事無く、一日中、魔物を殺し続けます。  私の作成者は、判りません。私を作成した方は、私を売りました。買った今の御主人様は、時々、私と会 って下さいます。  稼動を開始してから、既に十ヶ月が経ちました。ずっと、バイラン島の洞窟と、一番近くのカプラサービ スを往復しています。  昨日は、稀少なカードを手に入れました。フェンカードでした。収集品も全て、倉庫に入れて置きました。  私の御主人様は、そうした物を持ってきた時は、大変喜ぶようです。  「これからも持ってこいよ」  御主人様は、私の身体を玩びながら、そう仰られます。  この間は、御主人様が、服を脱げ、と仰いました。私は、命令のまま、服を脱ぎ、全裸のまま狩りをしま した。  通り掛る方は、皆、一様に驚かれました。中には、私を岩場へ引っ張り込む方もいらっしゃいました。御 主人様は、私の陵辱される姿を御覧になり、大変、御満足されたようです。このような時は、幾つも写真を 御撮りになり、一番良く撮れた物を、世間に見せびらかしては、御自慢を為されるそうです。  補給が終わりました。荷物バッグは、ほぼ空っぽとなり、入っているのは、十数本のスピードアップポー ションのみです。  狩場へ行く途中には、何組かのパーティとすれ違いました。何かを仰られたようです。  「また、あいつか」「早く消えてくんねーかな」「知ってる?あれ使ってる奴ってめっちゃキモイ奴なん だって」云々。  会話は全て記録しています。私には、それが何を意味するのか、判断する事はありません。判断されるの は、御主人様です。私は、速度増加を自分自身に掛け、狩場へ急ぎます。  狩場に到着しました。魔物が居ません。テレポートで移動します。魔物が居ました。フェンです。ウィン ドソードメイスで殴ります。  鋭い刃が付いた鈍器は、風の力が宿り、水の属性の魔物を切り刻みます。フェンは、幾度かの攻撃で、バ ラバラになりました。臓物の生臭い匂いが漂います。  収集品を拾い上げ、待機状態に入ります。後ろに何かが接近したようです。振り返ると、オボンヌが居ま した。一匹だけではありません。3匹居ます。これだけなら、問題ありません。ソードメイスを構え、攻撃 を開始します。  オボンヌの頭を殴ります。卵の殻を割った時のような音と、プティングケーキを叩き潰したような音が鳴 ります。オボンヌの頭は砕かれ、割れた頭蓋骨からは、白い脳が見えました。衝撃で飛び出た眼球が、視神 経と僅かな筋肉だけで、眼窩からぶら下っています。生命力の強いオボンヌは、尚も、その鈍く尖った爪で、 私を襲います。  爪が、私の腹に刺さりました。血は出ません。人形ですから。しかし、破損した箇所は、そのままでは機 能低下に繋がります。一定以上のダメージを受けた場合、私は、自分にヒールを施します。人間、人形問わ ず効果のあるヒールは、破損して、内部組織が露出した部分を、簡単に修復してくれます。  頭を砕かれたオボンヌに、私は、再度攻撃を加えます。今度は、胸に当たりました。屋根に並んだ氷柱を 次々に叩き落すように、オボンヌの肋骨は砕かれ、皮膚は裂け、内臓が潰れました。白っぽい血液が流れ出 し、そのオボンヌは、死にました。  まだ、オボンヌは居ます。後二匹です。身体の向きを変えた瞬間、レックスディビーナが、私の声を封じ ました。魔法を唱えられません。  その時を待っていたかのように、半漁人が、やってきました。他にも沢山、魔物が集まってきました。ヒ ドラも私を攻撃しています。  私は、テレポートで逃げ出す事も出来ず、唯唯、魔物に陵辱されます。オボンヌが、私の腕を噛み千切り、 フェンが、私の顔に噛み付き、眼球を喰らい、ソードフィッシュやマルクが、私の腹に喰い付きます。半漁 人は、持った銛で、私の身体中を貫きます。腹を貫かれ、銛の反しに引っ掛かった私の内蔵機関が、引き摺 り出されます。このままでは、壊れてしまいます。  やがて、身体中が、バラバラとなり、私の行動システムは、完全に破壊されました。  先程のパーティの方がいらっしゃいました。  「ぷ、ねーちょっと、あいつが死んでるよ〜」「馬鹿だよなー、何時も死んでるぜ、こいつ」「どうする ?これ」  私の身体を、足先で小突きながら、様々な事を仰られます。  「また通報しようか?このBOT」  私の会話システムが反応しました。  「私は、BOTじゃありません」  BOT、という単語に対して、実行される、私の言葉です。  「あ〜こいつ、BOTって言葉に反応する奴だろ、これだけ決定的な証拠もねーよな」  「私は、BOTじゃありません」  「うっざ、さっさと消えろよな〜死体が邪魔でキモイ」  「(自動帰還システム、機能不全により、停止。帰還不能)」  このままでは、帰る事も出来ません。帰る事が出来ないと、身体を修復し、狩りを続行する事が出来なく なってしまいます。狩りが出来なければ、御主人様は、御怒りになられるでしょう。  「そうだ、ねぇ・・・・」「おお、そりゃ良いや!」「やろやろ〜」  「せーの、リザレクション!!」  私の機能が回復していきます。蘇生魔法は、破壊された、私の機関を修復していきます。  「いくぞ〜離れろよ〜!?」  遠くで、何かが、吹き飛ばされる音が聞こえました。それは、私に向かってきています。マリンスフィア です。私の顔に直撃しました。特にダメージはありません。  「すっとらい〜く♪」「5・4・3・2・・・・・」  足元に転がったマリンスフィアが、爆発しました。その爆発は、私の身体をバラバラに千切り、数メート ル後ろへ、飛ばしました。私の身体の部分が、ぼとぼとと、岩の上に落ちてきます。最後に、ごとり、と私 の首が落ちました。爆発の衝撃で、酷く潰れた顔面は、骨格諸共砕かれ、皮膚がズタズタに裂け、中の機関 が露出しています。  右の目が見えません。どうやら、爆風で、顔の右側ごと、千切れ飛んだようです。ごろん、と転がった胴 体は、白い骨格を露出させ、内蔵機関をばら撒いていました。  「うっわーきっつー」「ちょっとやりすぎたかな?」「これぐらいBOTには丁度良いって」  「わわわわ・・・・ったしは、ぼっBBBBOTTTTTっとじゃじゃじゃ・・・・りませせせせ・・」  「うはwまだ言ってるこいつ」「キモーイ♪」「あっはははははは!!」  一通り、私を侮蔑して、こちらのパーティの方々は、去って行きました。  ばら撒かれた私の身体を、フェン達が啄ばみ、少しずつ無くなっていきました。  私の記憶は、その時点で、終了しました。  次に、目を開けた時、御主人様が居られました。  「ったく・・・何やってるんだよ。帰ってみれば死んだままでずっと居るし・・・」  「申し訳、御座いません」  「ウザイ、しゃべんな。糞・・・あの連中MPKで晒すかな・・・それともあいつらそっくりのBOTで も作って放流すっかな・・・」  「・・・・・」  「あ?何だよ、生き返ったんなら、さっさと狩りに戻れよ。邪魔くせーんだから」  「はい、了解致しました」  やはり、御主人様は、御立腹のようです。原因は、私です。  私は、先程の爆発で、ボロボロになったプリーストの装束を着け、ソードメイスを握り、また、狩場に向 かいました。  「ああー!またさっきのBOTだよ!」  「私は、BOTじゃありません」  私は、言葉を繰り返した。