ここはグラストヘイム地下水路。 高LV冒険者でなければ、来る事すらかなわない危険な場所。 私は自分自身の更なる鍛錬の為、そしてレアと呼ばれ高額で取引される古代アクセサリーを入手する為、ここで狩りを続けている。 「ファイアウォール!!」炎の障壁で魔物を牽制しつつ、「ウォーターボール!!」で仕留める。 水が圧縮され、超高速で撃ち出されるこの魔法の前に、強力な魔物として知られるスティングもなすすべ無く沈む。 そんな狩りに対する慣れ、いや、油断からか私は周囲の敵の気配を探る事を怠っていた・・・。  それは一瞬だった。 足元の何かが私の左足を掴むと、一気に逆さ釣りの状態に持ち上げられた。 「きゃぁぁあ!?」 不意を突かれ、混乱する私を更に激痛が襲う。 メキメキボキッ、見るとスティングに掴まれた左足が、あり得ない方向に曲がっている。 「足元涌き?早く逃げなきゃ、ハエの羽で逃げなきゃ」 痛みで涙をこぼしながらポケットに伸ばそうとする私の手を何者かが押さえ付ける。 それは別のスティングだった。 両腕がミシミシッと悲鳴を上げる。数秒後に肘から上の部分は握り潰されていた。 脱出手段であるテレポートクリップとハエの羽はポケットから落ち、手の届かない所に転がっている。 私は死を覚悟した。  だが、様子がおかしい。 いつもなら標的が死ぬまで執拗な攻撃を続けるスティングが攻撃を止め、私の股間を探っている。 「ひ、ひぁぁ やめてよぅ」 必死にもがく私を無視するかの様に、レオタードの下腹部分を引きちぎる。 好きな人にさえ、触らせた事も、見せた事も無い所を醜悪な魔物が弄っている。 ひとしきり私の陰部を調べたスティングは私を床に下ろした。 スティングの下腹部から突起物の様な物が出てきた。 まるで人間男性の陰茎のようなそれを私の陰部にあてがう。 「!! いやぁ、いやぁぁああ」 なんの前触れも無く突然訪れた純潔の喪失。 鈍い痛みと供にそれは挿入された。 「あ、あ、あうぁあああ・・・」私は声にならないような悲鳴を上げた。 結合部には破瓜の血が滲む。 グチュグチュッ、卑猥な音が水路に響く。 スティングの出す分泌液のせいか体中の痛みは次第に消え、快楽とも言える感覚が体を支配する。 嫌悪感で一杯の意識とは裏腹に、スティングの動きに合わせて腰を動かす自分がいる。 「はぁあっ、くっ・・んっ・あん・ん」 初めての相手が魔物。 なのに、腰を振りながら、いやらしい声を出している自分が酷く惨めに思えた。 「あはっ、あははっ・あんっ・んぁあっ」 私は泣きながら笑っていた。 そして スティングが体をブルブルと振るわせたかと思うと、何かが私のお腹の中に出された。  捕獲されてから4日目。 既に何体ものスティングに犯され続けた私は疲労困憊の状態。 両手と左足は紫色に腫れ、殆ど動かせない状態。 腹部は妊婦の様に膨れ、陰部は赤黒く腫れ上がり、膿に似た液体を垂れ流している。 魔物もこれ以上の行為は無理と判断したのだろう。 一体のスティングが私の見張りに付き、私は安静の状態となった。 スティングの異常な行動と、この状況を脱する方法を考えるうちに、私は眠ってしまった。 「生きたい。生き延びたい・・・zzz。」  捕獲されてから5日目。 私は前に読んだ魔物の研究文献の内容を思い出した。 スティングの繁殖期は3〜4月。彼らは変温魔法生物であるため、自らの体温で卵を温める事が出来ない。 そこで、卵を他の生物(人間を含む、雌)の子宮内に寄生させ孵化させる。 彼らの産卵管は麻酔成分を分泌し宿主の痛覚を麻痺させる。 7〜10日で孵化したスティングの幼生は宿主となった生物を食べ成長する。  もう一つ思い出した事がある。 レオタードの襟の裏に蝶の羽を1枚、隠してある事だ。 このアイテムを使えば、瞬時に最後のセーブ地点に帰還することが出来る。 しかし、粉砕骨折しているであろう私の両手では、取り出してから使用するまでに少し時間がかかる。 不審な行動に気付かれ、羽を取り上げられることは即ち、人生の終了を意味する。 「大丈夫、まだ2日ある。」 私は自分にそう言い聞かせ、慎重に隙をうかがうことにした。  捕獲されてから6日目。 私のおなかの中の異物が時おり蠢く。子宮に産み付けられた幼生の胎動だろう。 「ぅっ、おぇえええ」ビチャビチャ・・・嘔吐した。最悪の気分だ。 気が触れそうになる自分を抑え、冷静にスティングを観察し続ける。 結果、私は一つの発見をする。 私の見張りに付いた、このスティングには6時間ごとに10分程度、反応が鈍る時間があるようだ。 どうやら眠っているらしい。 ゴソゴソとわざと音を立ててみたが反応は無い。 今しかない! 満足に動かない手で何とか蝶の羽を取り出し、そして念じる。 私の体は青い光に包まれ、フッと軽くなった。  気が付くと、そこはゲフェンの街の東門の外だった。 満月の夜、虫の鳴き声、草木の匂い、全てが遠い昔の記憶に感じられた。 人の声が聞こえる。 私は地面を這うように、引きずるようにして声のする方に進んだ。 「助けて下さい。・・・ヒール下・さ・い」消え入るような声で必死に助けを乞う。 「お、おい大丈夫か!?」私に気付いた人達が駆け寄って来る。 「た・す・かった・・」                        第一部 fin