ぴちゃん・・・ぽちゃん・・・ どこからか水の音が聞こえる かっかっかっか・・・・ その中を一人靴音高く歩く女が一人 身のこなしには全く素早さというものが感じられず、傍目には剣士修練場を出たばかりの 剣士のほうがよほど強そうに見える 彼女は己の磨き上げた知性と詠唱技術のみで勝負するウィザード、いやウィッチであった ここはグラストヘイムの地下水道、たいていの冒険者には近づくことさえ許されない場所 しかし彼女にとっては毎日のように狩りに来る庭のようなものだ ここで主に気をつけるべきなのはものすごい速度で接近してくるネズミ程度、しかしやつらは 鳴き声ですぐにその存在を察知できる 幸い次の角の先からはあの独特の鳴き声はしてこない。彼女はなんの疑いも無く角を曲がった 次の瞬間彼女の目に映ったのは、見慣れない草履のようなもの。 「なにこれ・・・?」ふと独り言を漏らす しかし返ってきたのは自己紹介などであるはずもなく、意外なほどの速さによる体当たりだった 「きゃっ!」彼女は避けられるはずも無く、小さな体からは想像も出来ない圧力に負けて倒れこんでしまう 「くっ・・・」ここまで接近されてはいかに熟練していても普通に魔法を詠唱する時間は無い、 そう判断してフェンクリップを取り出し・・・たはずだった 「きゃ・・・きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」 無い。自分の右手が無くなっている 腰のクリップ入れに回したはずの腕の手首から先が消え、大量の血が噴き出していた すでに彼女の傍には音を聞きつけて蟲が集まっていたのだ 「ひっ・・・うそ・・・んぁ!」 内腿になにかが這いずる感覚がし、秘所にぞっとした感覚が走る 彼女は自らの体内に異物が侵入する感覚に右手の痛みも忘れて喘いだ 「あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!・・・あぎゃぶっ!!!」 しかし蟲のほうは彼女を楽しませようとしているわけでもなく、あっというまに子宮に達し、その肉を食い破った 自らの腹に穴が開き、草履が飛び出してくるのを見てしまった彼女だが、それでもまだ先ほどの続きを求めて手首の無い手を伸ばした そして弄れないことを思い出して左手でクリストスを触る 「あっ・・・こういうのもいいかも・・・んぐぁぅぅっ!」 開いた口にあの草履が飛び込んでくる もぞもぞと蠢いたが、それさえ一瞬のこと 「ん゙・・・ぅ゙・・・っ・・・・・・・・・・・・」 喉が食い破られ、今までで一番大量の血が噴き出した すでに声もでないその体で、それでも彼女は恍惚とした表情で左手を動かし続ける そして蟲に貪られながら一度弓反りにびくんっ!と体を震わせると、そのまま動かなくなった ・・・3分の後、そこにはおびただしい量の血と僅かな骨、それと彼女の身につけていたサークレットが残るだけだった 彼女は先日のミッドガッツニュースを見ていなかったのだ 『各地で大規模なモンスターの移動、出かける際はご注意を』