少女は、身も心も変わってしまった。  少女の腹は、食する事も出来ず。少女の口は、笑う事も出来ず。少女の眼は、涙を流す事も出来なくなった。  失われてしまった身体は、如何な高位奇蹟だろうと、二度と戻らなかった。  ベッドに横たわり、静かに、外を向く。そこに窓があって、外の風景が見えるだろう。少女は聞こえてくる喧騒から、 それを想像して、一日を過ごした。  そして、数年が経った。  少女は退院し、修練を積んだ。  ボロボロの身体は、職に就く事も出来ず、ノービスのまま修練を続けた。  復讐の為。その為だけに、純真無垢であった少女は、変わってしまった。  「いよう」ローグの兄さんだ。声の出ない私は、手を上げて返事をする。  姿は良く見えないが、気配を感じる事は出来る。兄さんだけじゃないのが判った。  「土産物だ」兄さんが何かを放った。ドスンという音と、小さな悲鳴が聞こえた。それは、覚えのある声だった。  「こいつが最後だったな」そうだ。私の復讐の相手。私の身体をこんなにした張本人。憎んでも憎み足りない、憎悪 の対象。  「ああ、猿轡をかましてるんだ。声が聞きたいか?」私は、コクリと首を縦に振った。  「ぷはっ!ちょっと!一体なんですの!?私を誘拐してどうする積もりなの!!?」声が聞こえた。ああ、あの時の ロングヘアーの奴だ。思い出せば、厭味ったらしい喋り方だった。今も変わってないみたいだ。癇に障る厭な声だ。  「何なのよ!何か言ったらどうですの!?」この声が、哀願する声に変わったら、どんなに嬉しい事だろう。そして その首を裂いてやれば、どんな声で鳴いてくれるだろう。私は、上手く表情の出ない顔を歪めて笑った。  「な・・・何よ・・・貴女、気色悪いですわね・・・!」この女は、私が誰か覚えてないのだろうか。ならば、思い 出させてやろう。私は、オペラ仮面を外した。  「ひっ」女は、短く悲鳴を上げた。自分の顔はどんなものかは知らないが、世間一般では、醜女であると言えるだろ う。何せ、顔の左半分は無く、右目は白く濁っているのだ。これを見て驚かない人間は居ないだろう。  「な、何、その顔・・・」まだ思い出せないのか。「思い出せよ。これは、お前がやったんだぞ」兄さんが促した。  「わ、私がやったですって?そんな事無いですわ!」女は否定する。私は苛立ちを覚えた。  「ほお、あの二人もそんな事を言っていたな・・・最後には思い出してくれたようだが」兄さんは、先の二人の事を 言った。そう、あの時のボブカットの女とポニーテールの女だ。あいつらも、私が直々に殺してやった。  「あの二人?まさか、○○○とXXXの事を言ってるの!?」女の声が変わる。そうだろうとも。新聞では、行方不 明扱いの筈だからな。  「ああ・・・あいつらが、今どこに居るか知ってるかい?」兄さんは勿体付けた言い方をした。私は、兄さんの腕を 突き、早くして、と合図を送った。  「お前の真下に居るよ」兄さんの言葉に、女が声を失うのが判る。震えているのが判る。見えなくても、感じる。  「こ・・・殺したの?」震える声で、女が言った。「こいつがな」私の頭に手を乗せて、兄さんが言った。  私は、血染めの短剣を抜いた。女に見せ付けるように、ブラブラと揺らした。  「早く殺したいか?焦るなよ。こいつは逃げられない。ゆっくり楽しもうぜ」兄さんが私に声を掛ける。その通りだ。 と私は頷いた。「ひぃ!や、止めて!殺さないで!」女が叫ぶ。「誰か!誰か助けて!!」助ける?誰が?誰も居ない。  「そうやって、助けを求めたこいつを、お前は助けたか?」兄さんが言った。「・・・・!?」女は思い出したよう だ。遅い。愚図め。  「あの・・・時のノービス?」確認するように、女は声に出した。「そうとも」兄さんの声が、女に突き刺さる。  私は、一歩一歩、女に近づく。女が身を捩り、逃げようと抗うが、兄さんに身体を抑えられ、殆ど動けない。  「ああ、こいつにはもうアンティペインメントを打ってある。痛みで死ぬ事は無いから、存分にやりな」嬉しい配慮 だ。  どういう風に殺そうか。ずっと、ずっと考えてきた。何から試そうか、そうだ、まずは、腹からだ。私の身体で最初 に喰われた腹。同じようにしてやる。  血に濡れた刃が、女の腹に触れる、ひんやりとしたその感触に、女は、ビクンと跳ねた。私は、片手で腹を抑える。  プツリ。刃の先端が、皮膚を破る。血が滲み出てくるのが判る。そのまま、刃を引くと、面白いように切れる。  「あっあっやめってっ!」女が何かと五月蠅い。私は、鞄からべとべとする液を取り出し、女の口に詰めた。「がば っごぼっ・・・!!」辛うじて鼻で息が出来るくらいだ。これで少しは静かになる。腹を裂いている刃を抜き、私は、 女に馬乗りになった。  「――――ごぼっ!ごぼぼっ!!」何かを叫んでいるようだ。大体想像が付く。助けて、死にたくない、殺さないで、 そんな辺りだろう。ひょっとしたら、ごめんなさいかも知れないが、そんな事を言われても、許す筈が無いだろう。私 は、出ない笑い声を上げた。  裂かれた皮膚は、それ程出血していない。私は、傷口に指を引っ掛け、そのまま一気に広げた。「――――!!!!」 女の身体がブルブルと震えている。緊張した筋肉は、張り詰め、耐え難い屈辱と、薬のせいで緩和している痛みに耐え ている。私は、ブルリと身体を震わせ、悦楽を感じた。  広げられた皮膚の下、筋肉の温かみを手の平で感じる。腹の胎動が伝わる。これを、私が止めるのだ。誰にもやらせ るものか。私は、腹の筋肉を短剣の柄で叩いた。叩く度に女が跳ねる。これは面白い。前にポニーテールの女でやった 時も楽しかった。「ぁーーーぃーーーー・・・」私は、か細い声で笑った。兄さんが、頭を撫でてくれた。きっと、あ の日のようににっこり笑っているだろう。私は嬉しくなった。  叩いている内に、女の反応が鈍ってきた。私は、鞄から覚醒剤を取り出し、女の太腿に打ち込んだ。途端に、女の身 体がビクビクと痙攣した。「ああ、こいつはプリーストだからな。そいつには効き過ぎるかもしれんな」効き過ぎるの は、都合が良い。もっともがけ。苦しめ。私の人生を砕いた悪魔め。何がプリーストだ。お前が地獄に落ちろ。  「――――!――――!!」女はピクピクと痙攣を続けている。ふと、顔に手を乗せてみた。涙を流している。畜生。 私は涙も流せないのに、こいつは流している。畜生。畜生。私は、女の顔を殴った。何度も、何度も。きっと、ボコボ コ腫れて、見るも無残な顔になっているに違いない。見られないのが残念だ。畜生。  女の腹の筋肉を短剣で裂いた。血が噴出している。内臓が破裂しているらしい。生臭い匂いが漂う。私は、その中に 両手を突っ込んだ。  「がばっ―――!!――――!!!??」女は身悶えしている。そりゃそうだ。身体の内側を犯しているんだ。私が された事と同じだ。お前は、私に犯されろ。  ヌルヌルとした触感を存分に楽しみながら、波打つ鼓動に合わせて手を動かす。あははは、楽しい。女は時折、身体 を跳ね上げ、私を喜ばせる。  内臓を掴み取る。多分、肝臓。短剣で丁寧に切り取り、女の顔にぶつけた。そのまま手を乗せ、女の顔の上で内臓を 潰す。「――――!――――!?」女は顔を背けようとするが、私はそれを許さない。顔を抑え、内臓の中身を擦り付 ける。そうそう、これをやったボブカットの女は、その瞬間、気絶したっけ。薬が足りなかったせいなんだろうな。と 私は思った。  「・・・ごぼっがはっ!!げほっげほっ!!」どうやら、べとべとした液を吐いたようだ。ついでに胃の中身も吐き 出したらしい。ツンとした刺激臭が鼻を突く。  「あぶ・・・もう・・・止めて、許して・・・」女が哀願している。だからなんだ?許すとでも思ったのか?私は、 女の腹にまた手を突っ込んで答えた。許す訳が無いだろう。  面白い事を思いついた。私は、女の下腹部に内側から手を伸ばす。コリコリとした感触。子宮だ。多分。短剣を子宮 に刺し入れ、穴を開ける。ここから、内側から、こいつを犯してやる。私は、思いっきり腕を突っ込んだ。  「ギャアアあがぎあゃがぁああーーーーーーー!!!」女の悲鳴が響く。女のスカートを捲くると、私の腕が、女の 股から飛び出しているのが判った。まだ、下着を穿いていたので、短剣で破り剥いだ。実に面白い。そのまま、腕を動 かす。「がひっぎゃひぅっやがっ・・・」腕の動きに合わせて、女の声が鳴る。楽しい。楽器のようだ。  ふと、女の股から飛び出した私の腕に、暖かい液体が流れてきた。小便を漏らしたらしい。汚い奴だ。私は、腕を抜 き、女の服で拭いた。  「はひっ・・・あひっ・・・あっ・・・」女の息は絶え絶えとなるが、まだ、意識はハッキリとしてる筈だ。私は、 兄さんに合図を送り、仕上げに掛かる事にした。  「もういいのか?」兄さんは、優しく聞いた。私は、頷いた。兄さんは、無言で立ち上がり、女を持ち上げ、木に吊 るし上げた。  「ぁ・・・・もう・・・・・・いやぁ・・・ごめん・・・なさ・・い・・・・たすけ・・・て・・・・」でも、許さ ない。お前は、的だ。  私は、吊るされた女に向けて、ナイフを投げる。ドカッ!「ぎゃあ!!!」女の腕に当たった。ナイフの練習台だ。 只の的だ。私は、次々とナイフを投げる。ナイフが当たる度に、女は声を上げた。  「大分当たるようになったな。一人目は全然当たらなかったのに」兄さんが褒めてくれた。嬉しい。  「やぁ・・・・もう・・・いやぁ・・」最後のナイフだ。私は、神経を集中させ、狙いを定める。狙うは、女の首。  ヒュッ!ドカッ!  ナイフは、狙い通り、女の首を掠めて、奥の木に刺さった。「成功だ。良くやった」兄さんも認めてくれた。  「ぁアぁウあうアあぁァぁぁッぁああぁうあああーーーーーーーーー!!!!」女の首から、鮮血が、噴水のように 流れた。勢い良く噴出し、近付くと、その飛沫を浴びる事が出来た。暖かい、真っ赤なシャワーだ。  私の過去を、洗い流して・・・お願い・・・・。